天然石

ウェード石

ウェード石:詳細・その他

概説

ウェード石(Wadeite)は、化学式K2ZrSi3O9で表されるケイ酸塩鉱物です。ジルコニウム(Zr)を主成分とする鉱物であり、カリウム(K)も多く含みます。その特徴的な結晶構造と産状から、地質学や鉱物学において興味深い存在とされています。

鉱物学的特徴

化学組成

ウェード石の化学組成は、K2ZrSi3O9です。これは、カリウム(K)、ジルコニウム(Zr)、ケイ素(Si)、酸素(O)から構成されることを示しています。ジルコニウムは、しばしば他の元素、特に鉄(Fe)やハフニウム(Hf)などで微量に置換されることがあります。

結晶系と結晶構造

ウェード石は単斜晶系に属します。その結晶構造は、ジルコニウム原子が酸素原子に囲まれた八面体(ZrO6)と、ケイ素原子が酸素原子に囲まれた四面体(SiO4)が組み合わさって形成されています。これらの構造単位は、カリウムイオンによって連結されており、複雑な三次元ネットワークを形成しています。この構造は、高温高圧下で安定な形態であり、その形成環境を示唆しています。

物理的性質

  • :一般的に無色から淡黄色、淡灰色を呈します。産状や共存鉱物によって、わずかに色調が変化することがあります。
  • 光沢:ガラス光沢を示します。
  • 条痕:白色です。
  • 硬度:モース硬度では5.5程度とされています。比較的脆い鉱物です。
  • 比重:3.0前後です。
  • 劈開:完全な劈開は観察されませんが、{001}方向にやや明瞭な劈開を示すことがあります。
  • 断口:貝殻状断口を示すことがあります。

産状と共存鉱物

ウェード石は、一般的にアルカリ性火成岩、特にネフェリン閃石や斜長石、アナルサイトなどの岩石中に産出します。これらの岩石は、マグマの活動によって地殻深部で形成され、上昇・冷却する過程でウェード石を晶出させたと推測されます。しばしば、ジルコン、アパタイト、チタン石、各種酸化鉱物など、ジルコニウムやチタンを含む他の鉱物と共存します。

また、一部のペグマタイトや熱水変質帯においても発見されることがあります。これらの産状は、ウェード石が形成される際に、比較的高い温度と圧力、そしてカリウムやジルコニウムに富む流体が存在したことを示唆しています。

発見の経緯と命名

ウェード石は、1965年にカナダのオンタリオ州、アルゴンキン州立公園で発見されました。この鉱物は、E.J.Wade博士によって収集された試料の中から、後に鉱物として特定されました。博士の名前を冠して「ウェード石」と命名されました。

鉱物学的・地質学的な意義

ウェード石は、ジルコニウムの稀少なカリウム含有ケイ酸塩鉱物であり、その特異な化学組成と結晶構造から、地質学的に重要な意味を持っています。主に、ジルコニウムの移動と沈殿、そしてアルカリ性マグマの成因や進化を理解する上で、示唆に富む情報を提供します。

また、ジルコニウムは、その安定性から放射性同位体年代測定に用いられるジルコンの主成分でもあります。ウェード石自体が年代測定に直接利用されることは少ないですが、共存するジルコニウム関連鉱物と共に、形成された岩石の年代や地質史を推定する手がかりとなることがあります。

さらに、ウェード石の結晶構造は、高温高圧下での鉱物相転移や、類似構造を持つ他の鉱物との関係性を研究する上でも貴重な対象となります。

用途・応用

ウェード石は、その産出量が少なく、また鉱物としての価値も限定的であるため、産業的な用途はほとんどありません。しかし、そのユニークな組成と構造から、学術研究の対象としては重要視されています。特に、ジルコニウムの化学や、アルカリ性岩石の形成過程を解明する上で、貴重な情報源となります。

コレクターの間では、その珍しさから収集の対象となることもありますが、一般的に市場に出回ることは稀です。

まとめ

ウェード石は、カリウムとジルコニウムを主成分とする単斜晶系のケイ酸塩鉱物であり、アルカリ性火成岩中に産出します。その特徴的な結晶構造は、高温高圧下での形成を示唆しており、地質学的な研究においてジルコニウムの挙動やアルカリ性マグマの成因を理解する上で重要な鉱物です。産業的な利用は限定的ですが、学術的な価値は高いと言えます。