透輝石:詳細とその他の情報
透輝石とは
透輝石(とうきせき、Diopside)は、輝石(pyroxene)グループに属する造岩鉱物です。化学組成はCaMgSi2O6であり、カルシウム、マグネシウム、ケイ素、酸素から構成されています。純粋な透輝石は無色透明ですが、不純物(鉄、クロム、アルミニウムなど)の混入により、緑色、青緑色、褐色、黒色など、様々な色合いを呈します。この多様な色彩と、場合によっては透明度が高いことから、宝石としても利用されることがあります。結晶系は単斜晶系に属し、柱状、粒状、板状などの結晶形をとることが一般的です。硬度はモース硬度で5~6程度であり、比較的脆い性質を持っています。
鉱物学的特徴
化学組成と構造
透輝石の化学組成はCaMgSi2O6ですが、一般的にはMgサイトにFe2+が、CaサイトにNa+やFe2+、Mn2+が置換することがあります。これにより、透輝石の終端メンバーであるヘデン輝石(CaFeSi2O6)との固溶体系列を形成します。輝石グループに共通する構造として、ケイ酸塩のテトラヘドロンが二連鎖構造(単斜輝石構造)をとることが特徴です。この二連鎖構造が、透輝石の物理的・化学的性質に大きく影響を与えています。
物理的性質
透輝石は、一般的にガラス光沢を示し、断口は貝殻状または不平坦状です。劈開は{110}に約87度と93度で明瞭に発達しており、この劈開性は輝石グループの鉱物に共通する特徴です。比重は3.2~3.4程度です。加熱すると、比較的低い温度で分解することが知られています。
産状と共生鉱物
透輝石は、主に変成岩中に産出します。特に、石灰岩やドロマイトが接触変成作用を受けたスカルン鉱床において、特徴的に見られます。また、広域変成作用を受けた岩石(例えば、角閃岩相やグラニュライト相の片岩、大理石など)にも産出します。火成岩中では、カンラン石や斜長石、黒雲母などと共に、比較的塩基性の火成岩(玄武岩、輝石安山岩など)の斑晶としても見られることがあります。透輝石と共生する鉱物としては、ガーネット(特にグロッシュラー)、斜方輝石、角閃石、磁鉄鉱、方解石、緑簾石などが挙げられます。
透輝石の種類と変種
透輝石は、その化学組成や含まれる不純物によって、様々な色や性質を持つ変種が存在します。代表的なものとしては以下のものが挙げられます。
- クロム透輝石 (Chrome Diopside): クロム(Cr)の含有量が高い透輝石で、鮮やかな緑色を呈します。宝石として人気が高く、ロシアのシベリア地方などで産出されます。
- キャッツアイ透輝石 (Cat’s-eye Diopside): 針状の内包物(主にブルサイトなど)によって、猫目効果(シャトヤンシー)を示す透輝石です。
- スター透輝石 (Star Diopside): 針状または板状の内包物によって、四条または六条のスター効果を示す透輝石です。
- スターロシアダイオプサイド (Star Russian Diopside): スター効果を示す、黒色から濃緑色の透輝石で、ロシア産のものによく見られます。
- ヘデン輝石 (Hedenbergite): 透輝石とヘデン輝石の固溶体系列に属し、鉄(Fe)の含有量が高いものです。
宝石としての透輝石
透輝石は、その美しい色合いや透明度、そして稀に現れる光学効果から、宝石としても利用されます。特にクロム透輝石は、鮮やかな緑色がエメラルドに似ていることから、比較的安価な代替石として、あるいはそれ自体の魅力によって人気があります。カットや研磨によっては、スター効果や猫目効果を示すものもあり、コレクターズアイテムとしても価値があります。
- 硬度と靭性: モース硬度は5~6であり、比較的傷つきやすい性質を持っています。また、劈開があるため、衝撃には注意が必要です。
- 処理: 宝石品質の透輝石には、内包物の除去や透明度の向上を目的とした含浸処理などが施されることがあります。
- 品質基準: 宝石としての品質は、色、透明度、カット、そして内包物の有無などによって評価されます。クロム透輝石の場合、鮮やかで均一な緑色が最も価値が高いとされます。
透輝石の用途
宝石としての利用以外にも、透輝石は様々な分野で利用される可能性があります。
- 造岩鉱物としての重要性: 地球の内部構造や岩石の生成過程を理解する上で、造岩鉱物としての透輝石の研究は重要です。
- 工業用途: ケイ素、マグネシウム、カルシウムといった元素を含んでいることから、セラミックスやガラスの原料としての可能性も研究されています。
- 地質学的指標: 特定の変成作用や岩石の生成環境を示す指標鉱物として、地質学的な研究に用いられます。
まとめ
透輝石は、CaMgSi2O6を主成分とする輝石グループの鉱物であり、その化学組成の多様性や不純物の影響によって、様々な色合いや性質を示します。主に変成岩や一部の火成岩中に産出し、ガーネットや斜方輝石などと共生することが多いです。特にクロム透輝石は、鮮やかな緑色を呈し、宝石としても人気があります。硬度や靭性には注意が必要ですが、その美しさから宝飾品として加工されることがあります。造岩鉱物としての学術的な重要性はもちろん、将来的な工業用途への応用も期待される鉱物と言えるでしょう。
