天然石

ストロンチウム輝沸石

ストロンチウム輝沸石(Celestite)について

ストロンチウム輝沸石、学名Celestite(セレスタイン)は、硫酸ストロンチウム(SrSO₄)を主成分とする鉱物です。その名前は、ラテン語で「空」を意味するcaelestisに由来しており、これはしばしば見られる淡い青色にちなんでいます。美しい結晶形と独特の色合いから、コレクターにも人気の高い鉱物の一つです。

鉱物学的な特徴

化学組成と結晶構造

ストロンチウム輝沸石の化学組成はSrSO₄です。ストロンチウム(Sr)がバリウム(Ba)と似たイオン半径を持つため、重晶石(BaSO₄)と固溶体を形成することがあります。しかし、通常はストロンチウムが優位な成分となります。
結晶構造は斜方晶系に属し、空間群 Pnmaを持ちます。原子はSr-O結合とS-O結合によって結びつき、三次元的なネットワーク構造を形成しています。この構造が、ストロンチウム輝沸石の比較的高い比重(約3.96-3.98)と硬度(モース硬度3.5-4)に寄与しています。

物理的性質

ストロンチウム輝沸石は、条痕(粉末にした時の色)は白色です。断口は貝殻状を示すことがあります。劈開は良好で、{001}面で完全、{210}面でやや不完全です。
光沢はガラス光沢から樹脂光沢を示します。透明なものから半透明、不透明なものまで存在します。
屈折率はおよそ1.632-1.637で、複屈折も観察されます。
多色性は一般的に弱いですが、濃色のものはやや現れることがあります。
熱的性質としては、加熱すると分解し、酸化ストロンチウム(SrO)と三酸化硫黄(SO₃)を放出します。

産状と生成環境

ストロンチウム輝沸石は、様々な地質環境で生成されます。
堆積岩中では、蒸発岩(塩類湖などの堆積物)の二次的生成物として、あるいは石灰岩やドロマイトなどの炭酸塩岩の空洞や割れ目に産出することが多いです。生物起源の堆積物中にも見られることがあります。
熱水鉱床においても、鉛・亜鉛鉱床などの中温熱水性の鉱化作用に伴って生成されることがあります。この場合、方解石、ドロマイト、石英、黄鉄鉱などと共生します。
火成岩中では、アルカリ岩やペグマタイトなどの岩石の副成分鉱物として産出することもあります。
変成岩中にも、接触変成作用や広域変成作用によって生成されることがあります。

産出地

ストロンチウム輝沸石は世界各地で産出しますが、特に有名な産地としては以下が挙げられます。
アメリカ合衆国:オハイオ州(特にマディソン)、テキサス州
メキシコ:チワワ州
カナダ:オンタリオ州
イギリス:ノーフォーク
マダガスカル
中国
イラン
ナミビア

ストロンチウム輝沸石の用途と利用

ストロンチウム輝沸石の最も重要な用途は、ストロンチウムの主要な工業原料としての役割です。

ストロンチウムの精錬

ストロンチウムは、その独特の性質から様々な産業分野で利用されています。
花火:ストロンチウムの化合物は、赤色の炎色反応を示します。この性質を利用して、花火の赤色の発色剤として広く使用されています。
ガラス製造:テレビ受像管のブラウン管のガラスには、X線を吸収する目的でストロンチウムが添加されていました。近年ではCRTテレビの生産減少に伴い、この用途は減っていますが、特殊なガラスや光学ガラスに利用されることもあります。
冶金:アルミニウム合金の添加剤として、強度や耐熱性を向上させるために使われることがあります。
医薬品:ストロンチウムの化合物は、骨粗しょう症の治療薬としても研究・利用されています。
その他の用途:磁性材料(フェライト)、顔料、レーザー技術など、多岐にわたる分野でストロンチウムとその化合物が利用されています。

宝飾品としての利用

ストロンチウム輝沸石は、その美しい色合いと透明感から、宝飾品の素材としても使用されることがあります。特に、淡い青色のものはカボションカットやファセットカットが施され、ペンダントやイヤリングなどのアクセサリーに加工されることがあります。ただし、硬度がそれほど高くないため、衝撃には注意が必要です。

ストロンチウム輝沸石の識別と鑑別

ストロンチウム輝沸石を他の鉱物と識別するためには、いくつかの特徴に注目します。

類似鉱物

ストロンチウム輝石と類似する鉱物としては、重晶石(Barite, BaSO₄)が挙げられます。重晶石も硫酸塩鉱物であり、ストロンチウム輝石と固溶体を形成することがあります。しかし、重晶石はバリウムを主成分とし、一般的に比重がより大きい(約4.45-4.48)という特徴があります。また、色も重晶石は無色、白色、黄色、青色など様々ですが、ストロンチウム輝石の特徴的な淡い青色は重晶石には少ない傾向があります。
石膏(Gypsum, CaSO₄・2H₂O)も硫酸塩鉱物ですが、結晶水を含み、硬度(モース硬度2)も低いため、ストロンチウム輝石とは容易に区別できます。

鑑別方法

比重の測定は、ストロンチウム輝石と重晶石を区別する上で有効な手段です。ストロンチウム輝石の方が重晶石よりも比重が小さいです。
炎色反応は、ストロンチウムは赤色、バリウムは黄緑色の炎色反応を示します。これを簡易的に確認することで、ストロンチウム輝石か重晶石かを推測することができます。
X線回折による結晶構造の解析は、最も確実な鑑別方法ですが、一般の愛好家には難しい方法です。

まとめ

ストロンチウム輝石は、美しい淡い青色と特徴的な結晶形を持つ鉱物であり、ストロンチウムの重要な工業原料として、また宝飾品としても価値があります。その生成環境は多様であり、世界各地で様々な形態で産出しています。重晶石などの類似鉱物との識別には、比重や炎色反応といった物理的・化学的性質の理解が役立ちます。この鉱物の魅力は、その科学的な重要性と、視覚的な美しさの両方にあります。