スパー石(スペルタイト)の詳細・その他
概要
スパー石(スペルタイト)、学名:(Ca,Fe)3(SiO4)3 は、カルシウムと鉄を主成分とするネソケイ酸塩鉱物です。その名前は、ギリシャ語で「部分」を意味する「spathe」に由来し、鉱物の劈開が完全ではないことから名付けられました。また、組成に鉄が含まれるため「スペルタイト」とも呼ばれます。
スパー石は、造岩鉱物の一つとして、変成岩、特に接触変成岩や広域変成岩の中にしばしば見られます。また、火成岩の一部や堆積岩にも産出することがあります。
鉱物学的特徴
化学組成
スパー石の化学組成は、(Ca,Fe)3(SiO4)3 と表されます。これは、カルシウム(Ca)と鉄(Fe)が固溶して存在することを示しています。一般的には、カルシウムが優位ですが、鉄の量が増加するにつれてスペルタイト寄りの組成となります。ケイ酸(SiO4)4-イオンが四面体構造を形成し、これがカルシウムや鉄の陽イオンと結びついています。
結晶構造
スパー石は等軸晶系に属し、立方晶または四面体の形をとることが多いです。結晶は、粒状、柱状、あるいは不規則な塊状として産出します。単結晶は比較的まれで、多くは集合体として見られます。結晶面には条痕が見られることもあります。
物理的性質
- 硬度:モース硬度では6.5~7程度であり、比較的硬い鉱物です。
- 比重:3.4~3.8程度で、組成(特に鉄の含有量)によって変動します。
- 色:一般的に淡黄色、黄褐色、赤褐色、黒褐色などを呈します。鉄の含有量が多いほど色が濃くなる傾向があります。
- 光沢:ガラス光沢、または樹脂光沢を示します。
- 劈開:完全ではなく、貝殻状断口を示すことが多いです。
- 条痕:白色または淡黄色です。
光学特性
スパー石は等軸晶系であるため、一般的に複屈折を示しません。しかし、組成的な不均一性や内部歪み、あるいは他の鉱物の包有物などにより、異方性を示すこともあります。偏光顕微鏡下では、淡い多色性を示す場合もあります。
産状と分布
主な産状
スパー石は、主に変成岩中に産出します。特に、石灰岩などがマグマに接触変成を受けて生成したスカルンにおいて、透輝石、閃石、石榴石などと共に産出する例が多く見られます。また、広域変成作用を受けた泥質岩や塩基性岩などにも見られます。
火成岩では、塩基性~中性の深成岩や火山岩の一部として、斜長石や輝石、橄欖石などと共生することがあります。さらに、堆積岩では、砂岩や泥岩のセメントとして、あるいは二次的に生成することもあります。
世界的な分布
スパー石は世界中の様々な地域で産出が報告されています。代表的な産地としては、以下のものが挙げられます。
- イタリア:アルプス地方など。
- スイス:アルプス地方など。
- オーストリア:アルプス地方など。
- アメリカ合衆国:カリフォルニア州、ニューヨーク州など。
- カナダ:オンタリオ州など。
- 日本:岩手県、新潟県、富山県などの変成岩地域。
これらの地域では、収集家向けの美しい標本や、鉱物学的な研究対象として注目されています。
スパー石の鉱物学的・地質学的重要性
スパー石は、その産状から変成作用の指標鉱物として重要視されます。特に、温度や圧力の条件を示す指標となることがあります。また、組成中の鉄とカルシウムの固溶度は、変成作用の条件や母岩の組成を推定する手がかりとなります。
スカルン鉱床においては、金属鉱物(鉄鉱、銅鉱など)の生成と密接に関連している場合があり、鉱床学的な観点からも研究されています。
その他
宝石としての利用
スパー石は、その透明度や色調によっては宝飾品として利用されることもあります。特に、鮮やかな黄色や褐色を呈するものは、カボションカットやファセットカットが施され、コレクターアイテムとして人気があります。しかし、劈開が完全ではないため、加工には注意が必要です。
誤認されやすい鉱物
スパー石は、色や外観が似ている他の鉱物と誤認されることがあります。例えば、石榴石(グロッシュラーなど)、オリビン、ジルコンなどと区別するには、硬度、比重、光学特性、そして産状などを総合的に判断する必要があります。
名前の由来の再確認
前述の通り、スパー石(sphene)の名前はギリシャ語の「spathe」に由来するとされていますが、これは劈開の不完全さに関連しています。一方、「スペルタイト」という名称は、組成における鉄の存在を示唆しています。これらの名称の使い分けは、文脈や地域によって異なる場合があります。
まとめ
スパー石は、カルシウムと鉄を主成分とするケイ酸塩鉱物であり、主に変成岩中に産出します。その化学組成、結晶構造、物理的性質は、変成作用や鉱床の研究において重要な情報を提供します。また、美しい色調を持つものは宝石としても価値があり、鉱物コレクターにも人気があります。その識別には、多角的な視点からの分析が求められます。
