曹長石(Plagioclase)の詳細・その他
概要
曹長石は、地殻を構成する主要な造岩鉱物の一つであり、斜長石(Plagioclase)とも呼ばれます。ケイ酸塩鉱物の一種であり、長石グループに属します。その組成は、アルバイト(NaAlSi3O8)とアノーサイト(CaAl2Si2O8)の固溶体系列で表され、この二つの端成分の比率によって種類が分類されます。地殻の約60%を占めると言われ、火成岩、変成岩、堆積岩など、あらゆる種類の岩石中に普遍的に存在します。
鉱物学的特徴
組成と固溶体系列
曹長石の化学組成は、アルバイト(ナトリウム長石)とアノーサイト(カルシウム長石)の連続的な固溶体です。この固溶体系列は、斜長石系列と呼ばれ、アルバイトをAn0、アノーサイトをAn100として、アノーサイト(An)のモル百分率で表されます。
- アルバイト(Albite): An0-10
- オリゴクレース(Oligoclase): An10-30
- アンドラシン(Andesine): An30-50
- ラブラドライト(Labradorite): An50-70
- バイオナイト(Bytownite): An70-90
- アノーサイト(Anorthite): An90-100
この組成の違いにより、曹長石は物理的・化学的な性質が変化します。例えば、アルバイトに比べてアノーサイトの方が融点が高く、硬度も若干高くなります。
結晶構造
曹長石は斜方晶系または単斜晶系の結晶構造を持ちます。一般的には、三斜晶系(Triclinic)の結晶構造をとることが多く、これはアルバイトやアノーサイトなどの端成分の結晶構造に由来します。結晶系によって、結晶の形状や劈開の様子などが異なります。
物理的性質
- 硬度: モース硬度で6〜6.5程度です。
- 比重: 組成によって異なり、2.6〜2.76程度です。アルバイトの方が軽く、アノーサイトの方が重くなります。
- 色: 無色、白色、灰色、淡黄色、淡赤色など、多様な色を呈します。不純物や結晶構造の欠陥によって色がつきます。特にラブラドライトには、ラブラドレッセンスと呼ばれる美しい遊色効果を示すものがあります。
- 光沢: ガラス光沢を呈します。
- 劈開: 2方向にほぼ直交する(約86度)良好な劈開を持ちます。この劈開は、曹長石を識別する上で重要な特徴の一つです。
- 条痕: 白色です。
産状と生成環境
曹長石は、その普遍性から様々な地質環境で生成されます。
火成岩
マグマが冷却固結してできる火成岩において、曹長石は最も主要な造岩鉱物の一つです。
- 深成岩: 花崗岩、閃緑岩、斑糲岩などに多く含まれます。
- 火山岩: 流紋岩、安山岩、玄武岩などにも見られます。
マグマの組成によって、含まれる曹長石の種類(アルバイト寄りかアノーサイト寄りか)が変化します。一般的に、ケイ酸成分の多い花崗岩にはアルバイトが多く、苦鉄質岩石である玄武岩などにはアノーサイトが多くなります。
変成岩
既存の岩石が熱や圧力によって変成作用を受けることで生成する変成岩にも、曹長石は広く存在します。
- 広域変成岩: 片麻岩、片岩、角閃岩などに多く含まれます。
- 接触変成岩: スカルン鉱床などにも見られます。
変成作用の温度・圧力条件によって、生成する曹長石の種類も影響を受けます。
堆積岩
火成岩や変成岩が風化・浸食され、運搬・堆積してできた堆積岩にも、曹長石の粒が含まれることがあります。ただし、堆積環境での風化に比較的弱いため、火成岩や変成岩ほど多量に含まれることは少ないです。
識別方法
曹長石を識別するための主な特徴は以下の通りです。
- 劈開: 2方向にほぼ直交する劈開は、石英(劈開がない)や他の長石(カリ長石は2方向の劈開が約90度)との識別点となります。
- 条痕: 白色であること。
- 硬度: ナイフで傷がつかない(硬度5.5程度)が、ガラス(硬度5.5程度)には傷がつく(硬度6〜6.5)ことを利用できます。
- 双晶: 曹長石には、特徴的なポリシニック双晶(斜長石双晶)が見られることがあります。これは、平行な細い条線として結晶面に現れることがあり、顕微鏡下で確認すると非常に有効な識別点となります。
- 色: 様々な色を呈しますが、特にラブラドライトの遊色効果は特徴的です。
種類と鑑賞
曹長石はその組成や含まれる不純物によって、様々な種類や美しい鉱物として知られています。
ラブラドライト(Labradorite)
曹長石系列の中間組成(An50-70)にあたるラブラドライトは、特にそのラブラドレッセンスで有名です。これは、結晶内部の微細な構造によって光が干渉・回折を起こし、青、緑、黄、赤などの虹色の輝きを生じさせる現象です。カナダのラブラドル地方で最初に見つかったことからこの名がつきました。装飾品や宝飾品として人気があります。
サンストーン(Sunstone)
オリゴクレースやアンドラシンなどに、ヘマタイトやゲーサイトなどの平たい結晶が内包されることで、キラキラとした輝き(アベンチュレッセンス)を示すものをサンストーンと呼びます。太陽の光を思わせる輝きからこの名がつけられました。装飾品として利用されます。
ムーンストーン(Moonstone)
一般的に、アルバイトやオリゴクレースなどの、ラブラドレッセンスとは異なる青白い光沢(シラー)を示すものをムーンストーンと呼びます。月の光のような神秘的な輝きを持つことからこの名がつけられ、宝飾品として古くから愛されています。
その他の種類
端成分であるアルバイト(ナトリウム長石)やアノーサイト(カルシウム長石)も、それぞれ独立した鉱物として扱われます。アルバイトは白く、アノーサイトは無色から灰色を呈することが多いです。
利用
曹長石は、その特性から様々な分野で利用されています。
- 宝飾品: 上述したラブラドライト、サンストーン、ムーンストーンは、美しい輝きを持つことから宝飾品として加工されます。
- ガラス・陶磁器: 長石類(長石グループ全体)は、ガラスや陶磁器の製造において、融剤(融点を下げる働き)として重要な原料となります。曹長石もこの用途で広く利用されています。
- 充填剤: プラスチックや塗料などに添加される充填剤としても利用されることがあります。
まとめ
曹長石は、地殻に最も豊富に存在する造岩鉱物の一つであり、その組成(アルバイトとアノーサイトの固溶体)によって多様な性質を示します。火成岩、変成岩、堆積岩といったあらゆる岩石中に見られ、その産状も多岐にわたります。劈開、硬度、条痕などの物理的性質に加え、特徴的な双晶は識別において重要です。特にラブラドライト、サンストーン、ムーンストーンなどは、その美しい輝きから宝飾品としても価値があります。また、ガラスや陶磁器の製造原料としても不可欠な鉱物です。
