ロヴダル石 (Lovdarite) の詳細とその他
概要
ロヴダル石 (Lovdarite) は、化学式 Na2CaMg2(Si6O15)・H2O で表されるケイ酸塩鉱物です。その特徴的な構造と化学組成から、鉱物学において興味深い存在として位置づけられています。比較的最近発見された鉱物であり、その産状や性質については現在も研究が進められています。
化学組成と構造
ロヴダル石は、ナトリウム (Na)、カルシウム (Ca)、マグネシウム (Mg)、ケイ素 (Si)、酸素 (O) を主成分とし、構造中に水分子 (H2O) を含みます。その化学組成は、Na2CaMg2(Si6O15)・H2O と精密に定義されています。この組成は、ケイ酸塩鉱物の中でも特に複雑な構造を示唆しています。
ロヴダル石の構造は、ケイ素と酸素からなる「シキスタ」(Si6O15) という特殊なユニットによって特徴づけられます。このユニットは、互いに連結した六員環と四員環からなる鎖状構造であり、これがロヴダル石の骨格を形成しています。このシキスタユニットの周りに、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムといった陽イオンと、構造水が配置されることで、鉱物全体の安定性が保たれています。この複雑な三次元構造は、他の多くのケイ酸塩鉱物とは一線を画しており、その構造解析は鉱物学に新たな知見をもたらしました。
物理的性質
ロヴダル石は、通常、白色から無色の結晶として産出します。しかし、微量に含まれる不純物によっては、淡い黄色や淡いピンク色を呈することもあります。その結晶系は単斜晶系に属し、しばしば柱状や針状の結晶形を示します。しかし、肉眼では識別しにくい微細な結晶として産出することが一般的です。
モース硬度は、一般的に5.5から6程度であり、比較的脆い性質を持っています。そのため、産出条件下では容易に破壊される可能性があります。比重はおよそ2.8前後とされています。条痕は白色です。劈開は完全ではなく、断口は貝殻状を示すことがあります。光沢はガラス光沢を呈します。
光学的には、二軸性であり、屈折率は比較的高い値を示します。複屈折も観察されます。
産状と発見
ロヴダル石が発見されたのは、ノルウェーのオスロ地域にあるロヴダル (Lovdal)という場所が最初であり、その地名にちなんで命名されました。この地域は、アルカリ性火山岩やペグマタイトが分布する地質学的に特徴的な場所です。
ロヴダル石は、通常、アルカリ性火成岩、特にネフェリン閃長岩 (nepheline syenite)やペグマタイトといった、マグネシウムやナトリウム、ケイ素に富む火成岩の石英脈や空洞部で、他のアルカリ性鉱物(例えば、ネフェリン、斜長石、角閃石など)と共に産出します。これらの場所では、マグマの固結過程で、揮発性成分や希少元素が濃集し、特徴的な鉱物群が形成されることがあります。
発見当初は、その特殊な構造と組成から、新鉱物として注目されました。その後の研究により、その鉱物学的、地球化学的な意義が明らかにされてきています。
鉱物学的・地球化学的意義
ロヴダル石の発見とその詳細な構造解析は、ケイ酸塩鉱物の多様性を拡げる上で重要な意味を持っています。特に、シキスタというユニークなケイ酸塩アニオンユニットの存在は、ケイ酸塩鉱物の構造形成メカニズムに関する理解を深めることに貢献しました。
また、ロヴダル石は、アルカリ性火成岩の形成過程における元素の挙動や、マグマの分化作用、揮発性成分の影響などを理解する上での指標鉱物となり得ます。その産状から、マグマの結晶化末期に生成された可能性が示唆されており、マグマの組成や温度、圧力といった条件を知る手がかりとなります。
さらに、ロヴダル石に含まれる微量元素の分析は、その母岩の起源や、地球内部における物質循環の理解にも繋がる可能性があります。
鑑別と分析
ロヴダル石は、その特徴的な産状と物理的性質から、他の鉱物との鑑別が可能です。特に、アルカリ性火成岩中に見られる無色から白色の針状・柱状結晶であり、硬度が中程度であること、そしてX線回折による特異なパターンを示すことが、その鑑別の決め手となります。
詳細な分析には、電子線マイクロアナライザー (EPMA)による化学組成分析や、X線回折 (XRD)による結晶構造解析、赤外分光法 (IR spectroscopy)による構造水の分析などが行われます。
まとめ
ロヴダル石は、ノルウェーで発見された、Na2CaMg2(Si6O15)・H2O という複雑な化学組成を持つケイ酸塩鉱物です。その最大の特徴は、シキスタと呼ばれる特殊なケイ酸塩アニオンユニットからなる三次元構造にあります。白色から無色の柱状・針状結晶として、アルカリ性火成岩のペグマタイト脈などに産出します。その発見は、ケイ酸塩鉱物の多様性を示すとともに、岩石の形成過程や元素の挙動を理解するための重要な手がかりを与えています。鉱物学的な研究対象として、その構造や地球化学的な意義は今後も探求されていくでしょう。
