燐苦土ウラン石(Rutherfordine)の詳細・その他
鉱物としての概要
燐苦土ウラン石(り * ん * く * ど * ウ * ラ * ン * せ * き、Rutherfordine)は、化学組成が UO₂CO₃(炭酸ウラニル)で表される鉱物です。ウランの炭酸塩鉱物であり、その名前は著名な物理学者であるアーネスト・ラザフォード卿にちなんで名付けられました。
化学組成と構造
燐苦土ウラン石の化学式は UO₂CO₃ です。これは、ウラニルイオン(UO₂²⁺)と炭酸イオン(CO₃²⁻)から構成されています。結晶構造においては、ウラニルイオンは直線状の構造をとり、その周囲を炭酸イオンが配位しています。この構造が、燐苦土ウラン石の物理的・化学的特性に影響を与えています。
物理的性質
* **色:** 燐苦土ウラン石は、一般的に黄色、黄褐色、緑黄色を呈します。この色は、ウランの価数や不純物の存在によって変化することがあります。
* **光沢:** ガラス光沢から樹脂光沢を持ちます。
* **条痕:** 淡黄色です。
* **結晶系:** 斜方晶系に属します。
* **晶癖:** 板状、柱状、針状の結晶として産出することが多く、しばしば集合して見られます。また、塊状や腎状の集合体としても産出します。
* **劈開:** 完全な劈開を持ち、特定の方向に沿って容易に割れます。
* **断口:** 貝殻状から不平坦状を示します。
* **硬度:** モース硬度で2~2.5程度です。比較的軟らかい鉱物と言えます。
* **比重:** 約4.5~5.0程度です。ウランを含有するため、比較的重い鉱物です。
* **透明度:** 透明から半透明です。
* **蛍光:** 紫外線(特に長波長)を照射すると、淡黄色や緑黄色の蛍光を示すことがあります。これはウランの特性に起因します。
産状と生成条件
燐苦土ウラン石は、主に二次鉱物として生成されます。これは、既存のウラン鉱物が風化や化学変質を受けることによって生成されることを意味します。
生成環境
* **二次鉱床:** 一次ウラン鉱床の酸化帯(地表近くで風化作用を受けた部分)で、ペックブレンド(U、Pb、O、Hからなる複雑なウラン酸化物鉱物)などの一次ウラン鉱物が酸化・水和することによって生成されます。炭酸を多く含む地下水や表層水の作用が重要です。
* **花崗岩質ペグマタイト:** 花崗岩のペグマタイト(巨晶花崗岩)脈中にも、二次鉱物として産出することがあります。
* **石灰岩やドロマイトの鉱化帯:** 石灰岩やドロマイト(苦灰岩)などの炭酸塩岩がウランを含む熱水流体によって交代された場所でも見られます。
生成メカニズム
燐苦土ウラン石の生成には、ウラン、二酸化炭素(CO₂)、水(H₂O)の存在が不可欠です。一般的には、六価ウラン(U⁶⁺)が炭酸イオンと水の存在下で安定な炭酸ウラニル(UO₂CO₃)を形成します。
2UO₂²⁺ + 2CO₃²⁻ + H₂O → 2UO₂CO₃ + CO₂ + 2OH⁻
(これは簡略化された反応式であり、実際の生成過程はより複雑です)
二次鉱物としての性質上、熱水変質や風化作用が活発な地域で産出する傾向があります。
産出地
燐苦土ウラン石は、世界各地のウラン鉱床で発見されています。代表的な産地としては、以下のような場所が挙げられます。
* **アフリカ:**
* コンゴ民主共和国(カタンガ地方):カメンザ(Kamenza)鉱床など、有名なウラン・銅鉱床から産出します。
* ナミビア:ロスィング(Rössing)鉱山など、花崗岩関連のウラン鉱床。
* 南アフリカ
* **北米:**
* アメリカ合衆国:ユタ州、コロラド州、ニューメキシコ州など。ペックブレンドを多く含む鉱床。
* カナダ:サスカチュワン州など。
* **ヨーロッパ:**
* チェコ共和国:ヨアヒムスタール(Jáchymov)など。
* ドイツ
* **オーストラリア:**
* 南オーストラリア州:オリノ(Olympic Dam)鉱山など。
これらの地域は、ウランの一次鉱物が豊富に存在し、風化や変質作用を受けやすい条件が整っている場所です。
鉱物学的・地質学的意義
燐苦土ウラン石は、ウランの二次鉱化作用を理解する上で重要な鉱物です。
* **ウラン鉱床の評価:** 燐苦土ウラン石の存在は、その場所がウランの二次的な富化を受けたことを示唆します。そのため、ウラン資源探査において指標鉱物となることがあります。
* **地球化学的プロセスの解明:** 風化、浸食、地下水の化学などの地球化学的プロセスを研究する上で、二次鉱物は貴重な情報源となります。
* **放射性物質の挙動:** ウランは放射性元素であるため、燐苦土ウラン石は放射性物質の地球における挙動を理解するための研究対象ともなり得ます。
その他(関連鉱物・用途など)
燐苦土ウラン石は、しばしば他の二次ウラン鉱物と共生して産出します。代表的な共生鉱物には以下のようなものがあります。
* ブラシュライト(Brackebuschite):Pb₂Fe³⁺₂(UO₂)₂O₂(OH)₂
* カーノート石(Carnotite):K₂(UO₂)₂(VO₄)₂・3H₂O(バナジン酸カリウムウラニル)
* アデライト(Adeite):Ca₄(UO₂)₂(VO₄)₂Cl₂・14H₂O
* シュトークライト(Sturmanite):Ca₆(UO₂)₂(Si₆O₁₆)(OH)₄Cl₂・20H₂O
* ヘルダライト(Herderite)
* オリビニン(Olivenite)
* ゼノタイム(Xenotime)
これらの鉱物との共生関係は、その場所の化学的条件や生成履歴を推測する手がかりとなります。
用途
燐苦土ウラン石自体は、ウランの鉱石として直接採掘・精錬されることは稀です。ウランの一次鉱物、例えばユウロペニア(Uraninite、UO₂)やカマチット(Coffinite、USiO₄)などが、より主要なウランの供給源となります。燐苦土ウラン石は、ウランの二次的な分布や移動を示す指標として、また鉱物学的な研究対象として重要視されます。
ウランは原子力発電の燃料として利用されるため、ウラン鉱物の研究はエネルギー資源の観点からも重要です。しかし、燐苦土ウラン石は二次鉱物であり、その品位(ウランの含有量)は一般的に低い傾向にあるため、経済的な採掘対象となることは少ないです。
まとめ
燐苦土ウラン石(Rutherfordine)は、UO₂CO₃という化学組成を持つウランの炭酸塩鉱物です。黄色から黄褐色を呈し、板状や柱状の結晶として産出することが多いです。二次鉱物として、一次ウラン鉱物の風化や化学変質によって生成されます。世界各地のウラン鉱床、特に酸化帯やペグマタイト、炭酸塩岩の鉱化帯で発見されます。ウラン資源探査の指標鉱物や、地球化学的プロセスの研究対象として鉱物学的・地質学的に重要な鉱物です。直接的な経済的用途は限定的ですが、ウランの二次的分布を理解する上で不可欠な存在と言えます。
