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燐灰ウラン石グループ

燐灰ウラン石グループ:詳細とその他の情報

燐灰ウラン石グループの概要

燐灰ウラン石グループ(Rhabdophane group)は、希土類元素(REE)を含むリン酸塩鉱物のグループであり、その名称はギリシャ語の「rhabdos」(棒)と「phaino」(現れる)に由来します。これは、しばしば棒状あるいは針状の結晶形態で産出することにちなんでいます。このグループの鉱物は、一般式 (REE,Ca,Th)PO4・nH2O で表され、主成分として希土類元素のリン酸塩水和物を含みます。希土類元素はランタン (La) からルテチウム (Lu) までのランタニド系列の元素と、イットリウム (Y)、スカンジウム (Sc) などを含みます。このグループには、燐灰ウラン石 (Rhabdophane)石灰燐灰石 (Ɣ)スコロダイト (Scorodite) の3つの主要な鉱物種が含まれますが、厳密にはスコロダイトはヒ素酸塩であり、本グループの典型的なメンバーではありません。しかし、構造的な類似性からしばしば関連付けて論じられます。本稿では、主に燐灰ウラン石と石灰燐灰石に焦点を当て、その詳細について掘り下げていきます。

燐灰ウラン石グループの主要鉱物種

燐灰ウラン石 (Rhabdophane)

燐灰ウラン石の組成式は、一般的に (REE)PO4・nH2O と表され、希土類元素が主成分となります。特に、ランタン (La)、セリウム (Ce)、ネオジム (Nd)、プラセオジム (Pr) などの軽希土類元素が優勢であることが多いです。燐灰石ウラン石は、その発見当初はウランを含むと誤解されていたため「ウラン石」という名前がついていますが、現代の分析ではウランの含有量はごくわずか、あるいは含まれない場合がほとんどです。燐灰ウラン石は、一水和物 (Rhabdophane-(Ce)・H2O) および三水和物 (Rhabdophane-(Ce)・3H2O) の形態で存在し、後者の方がより一般的です。結晶系は斜方晶系で、しばしば微細な粒状、球状、あるいは放射状の集合体として産出します。色は無色、白色、淡黄色、淡緑色など多様です。希土類元素の置換によって、燐灰ウラン石-(La)燐灰ウラン石-(Nd) など、元素名を冠したサブグループが存在します。例えば、燐灰ウラン石-(Ce) はセリウムを主成分とする燐灰ウラン石を指します。この鉱物は、花崗岩質ペグマタイト、熱水鉱床、砂岩、堆積岩など、様々な地質環境で生成されます。また、風化作用によって希土類元素が富化された二次鉱物としても産出することがあります。

石灰燐灰石 (Ɣ)

石灰燐灰石(Ɣ)は、燐灰ウラン石グループのもう一つの主要なメンバーであり、その組成式は (REE,Ca)PO4・nH2O と表されます。燐灰ウラン石と比較して、カルシウム (Ca) の含有量が多く、希土類元素との固溶体関係にあります。こちらも一水和物と三水和物の形態が見られます。結晶系は斜方晶系で、燐灰ウラン石と同様に粒状、針状、あるいは塊状の集合体として産出することが多いです。色は無色、白色、灰色、淡黄色など、透明から半透明のものが多いです。石灰燐灰石は、主に花崗岩質岩石、ペグマタイト、熱水鉱床、および堆積岩中に見られます。二次鉱物としても生成されることがあります。

スコロダイト (Scorodite)

スコロダイトは、一般式 Fe3+AsO4・2H2O で表されるヒ素酸塩鉱物です。構造的には燐灰ウラン石グループと類似していますが、主要なアニオンがリン酸塩ではなくヒ素酸塩である点が異なります。そのため、厳密には燐灰ウラン石グループには含まれませんが、その関連性からしばしば共に論じられます。スコロダイトは、鉄を含む硫化物鉱床の酸化帯で二次的に生成されることが多く、鮮やかな緑色や青緑色を呈します。毒性が高いヒ素を含むため、取り扱いには注意が必要です。

燐灰ウラン石グループの生成環境と産状

燐灰ウラン石グループの鉱物は、比較的広範な地質環境で生成されます。主な生成場所としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 花崗岩質ペグマタイト: 希土類元素が濃集しやすいペグマタイト脈中に、他の希土類鉱物と共に産出することがあります。
  • 熱水鉱床: 中温~高温の熱水溶液から沈殿して生成されることがあります。
  • 堆積岩: 砂岩や頁岩などの堆積岩中に、希土類元素が供給され、水和リン酸塩として析出することがあります。特に、古代の河川や湖沼などの堆積環境で生成されることがあります。
  • 風化帯: 希土類元素を含む岩石が風化作用を受ける過程で、二次鉱物として生成されることがあります。この場合、元の鉱物から希土類元素が溶出し、再沈殿する形で形成されます。

これらの環境で、燐灰ウラン石グループの鉱物は、しばしば単独で、あるいは他の希土類鉱物(例: モナズ石、バストネサイト)、リン酸塩鉱物(例: アパタイト)、酸化鉱物などと共生して産出します。

燐灰ウラン石グループの科学的・産業的重要性

燐灰ウラン石グループの鉱物は、その希土類元素含有量から、科学的および産業的に重要な意義を持っています。

  • 希土類元素の供給源: 希土類元素は、現代のハイテク産業に不可欠な元素であり、永久磁石、触媒、蛍光体、ガラス添加剤などに幅広く利用されています。燐灰ウラン石グループの鉱物は、これらの希土類元素の潜在的な供給源となり得ます。特に、セリウムやネオジムなどの軽希土類元素を多く含む場合、資源としての価値が高まります。
  • 地球化学的研究: 燐灰ウラン石グループの鉱物は、希土類元素の地球化学的挙動を理解するための重要な指標となります。これらの鉱物の組成や分布は、岩石の生成過程や風化作用、堆積環境などを推定する手がかりとなります。
  • 同位体分析: 希土類元素の同位体比は、地質年代決定や岩石の起源の推定などに利用されます。燐灰ウラン石グループの鉱物は、これらの同位体分析の試料としても用いられます。
  • 環境学: 希土類元素は、環境中での挙動や生体への影響についても研究が進められています。燐灰ウラン石グループの鉱物は、環境中の希土類元素の挙動を解明する上での研究対象となることもあります。

燐灰ウラン石グループの識別と分析

燐灰ウラン石グループの鉱物を識別するには、以下のような特徴が重要となります。

  • 形態: 針状、棒状、粒状、球状などの集合体。
  • 色: 無色、白色、淡黄色、淡緑色など。
  • 光沢: ガラス光沢から亜金属光沢。
  • 条痕: 白色。
  • 劈開: ほとんどなし。
  • 硬度: モース硬度で3~5程度。
  • 比重: 2.5~4.5程度(組成による)。

より詳細な分析や正確な同定には、X線回折 (XRD)、電子線マイクロアナライザー (EPMA)、ICP-MS (誘導結合プラズマ質量分析法) などの分析手法が用いられます。これにより、組成、結晶構造、微量元素の含有量などを明らかにすることができます。

まとめ

燐灰ウラン石グループは、希土類元素を豊富に含むリン酸塩水和物鉱物のグループであり、燐灰ウラン石と石灰燐灰石が代表的なメンバーです。これらの鉱物は、多様な地質環境で生成され、現代産業に不可欠な希土類元素の供給源として、また地球化学的研究の対象として重要な存在です。その微細な形態や広範な産状から、識別や分析には専門的な手法が必要となる場合もありますが、その研究は元素の挙動や地球の歴史を解き明かす上で欠かせないものとなっています。