天然石

ペンタゴン石

ペンタゴン石 (Pentagonite) の詳細・その他

概要

ペンタゴン石は、その名の通り、五角形(ペンタゴン)の結晶形を特徴とする、比較的珍しい鉱物です。化学組成は Ca$_3$Si$_3$O$_7$(OH)$_3$・3H$_2$O で、ケイ酸塩鉱物の一種に分類されます。そのユニークな形状と、しばしば鮮やかな青色を呈することから、コレクターの間で人気がありますが、産出量が限られているため、一般にはあまり知られていない鉱物と言えます。

特徴

結晶構造と形態

ペンタゴン石の最も顕著な特徴は、その結晶形です。通常、針状または柱状の結晶として産出しますが、まれに放射状に広がる集合体や、五角形を思わせる断面を持つ結晶が見られます。この五角形は、結晶学的な対称性から自然に形成されるものであり、人工的な加工によるものではありません。結晶構造は比較的複雑で、ケイ素原子と酸素原子が形成する三次元的なネットワークに、カルシウムイオン、水酸基 (OH)、そして水分子が配位しています。

ペンタゴン石の色は、産地や含まれる微量元素によって幅がありますが、一般的には 鮮やかな青色 を呈することが多いです。この青色は、鉱物中に含まれる微量の金属イオン(多くは銅)に由来すると考えられています。青色の度合いは、産地や結晶の成長条件によって異なり、淡い空色から深い藍色まで見られます。まれに、無色や淡いピンク色を呈することもあります。

硬度と比重

ペンタゴン石のモース硬度は、およそ 5 程度で、比較的脆い鉱物です。これは、結晶構造の結合がそれほど強固ではないことを示唆しています。比重は、およそ 2.5~2.7 程度です。これは、他の一般的なケイ酸塩鉱物と比較して、やや低い値と言えます。

産状

ペンタゴン石は、一般的に 熱水変質作用 を受けた岩石中に産出します。特に、蛇紋岩や玄武岩などの超苦鉄質岩や苦鉄質岩が、高温高圧の熱水によって変質した際に生成されることが多いです。こうした変質帯の割れ目や空洞に、他の二次鉱物と共に充填される形で産出します。また、一部の砂鉱床から、風化・浸食された岩石の破片として見つかることもあります。

産出地

ペンタゴン石の産出地は、世界的に見ても限られています。最も有名で、高品質な標本が採集されることで知られているのは、 インドのデカン高原 です。特に、マハラシュトラ州のプネー近郊で産出されるペンタゴン石は、その鮮やかな青色と美しい結晶形から、世界中のコレクターを魅了しています。その他、 アメリカ合衆国 (特にネバダ州、ワシントン州)、 カナダ 、 イタリア 、 ロシア などでも、小規模ながら産出が報告されています。

鉱物学的な意義

ペンタゴン石は、その特殊な結晶構造と産状から、鉱物学的な研究対象としても興味深い鉱物です。熱水変質作用のメカニズムや、特定の岩石環境下での鉱物生成プロセスを理解する手がかりを与えてくれます。また、その色合いは、宝石としての利用可能性も示唆しますが、その脆さと産出量の少なさから、宝飾品として広く流通することは稀です。

コレクションにおける価値

ペンタゴン石は、その希少性と独特の美しさから、鉱物コレクターの間で高い評価を得ています。特に、透明度が高く、鮮やかな青色を呈し、かつ美しい結晶形を保っている標本は、非常に価値が高いとされます。デカン高原産のペンタゴン石は、その代表格であり、しばしば高値で取引されます。コレクションとしては、結晶の形状、色、サイズ、そして産地の情報などが、その価値を左右する要因となります。

類似鉱物

ペンタゴン石は、その青色から、他の青色を呈する鉱物と混同されることがあります。代表的なものとしては、 アズライト や ラピスラズリ などが挙げられます。しかし、ペンタゴン石は、それらの鉱物とは結晶構造や化学組成が大きく異なります。特に、アズライトは炭酸塩鉱物であり、ラピスラズリは複雑なケイ酸塩鉱物の集合体です。ペンタゴン石の五角形を思わせる結晶形や、針状・柱状の形態も、これらの類似鉱物との識別点となります。

その他

ペンタゴン石という名称は、ギリシャ語で「五」を意味する「pente」と「角」を意味する「gonia」に由来しており、その結晶形の特徴をよく表しています。この鉱物は、まだ発見されてからの歴史が浅く、その形成過程や鉱物学的な特性については、現在も研究が進められています。

まとめ

ペンタゴン石は、そのユニークな五角形を思わせる結晶形、鮮やかな青色、そして限られた産出量から、鉱物学的な興味を惹くと同時に、コレクターの間で珍重される鉱物です。インドのデカン高原で採集される標本が特に有名であり、その美しさと希少性から、鉱物愛好家にとって魅力的な存在と言えるでしょう。