カミントン閃石:詳細とその他
カミントン閃石(カミントンせんせき、Camptonite)は、輝石グループに属する角閃石の一種であり、特にアルカリ玄武岩やその関連岩石中に産出する特徴的な鉱物です。その組成や産状、そして物理的・化学的性質は、火成岩の成因や地質学的環境を理解する上で重要な手がかりを与えてくれます。
鉱物学的特徴
組成と化学式
カミントン閃石の化学式は、一般的に (Na,Ca)2(Mg,Fe,Al)5(Si,Al)8O22(OH)2 と表されます。これは、角閃石グループの一般的な化学式に沿ったものであり、ナトリウム(Na)やカルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、酸素(O)、そして水酸基(OH)といった元素から構成されています。
特に、カミントン閃石はナトリウムを多く含む角閃石であり、その名称もかつてアメリカ合衆国マサチューセッツ州カミントンで発見されたことに由来しています。このナトリウムの存在が、他の角閃石と区別される重要な特徴の一つです。
結晶構造
カミントン閃石は、単斜晶系に属し、その結晶構造は角閃石グループに共通する二連鎖珪酸塩構造を持っています。これは、SiO4四面体が二列に連なって帯状になった構造が基本となっています。この構造の中で、様々な陽イオンが配置されることで、多様な角閃石鉱物の種類が生まれます。
物理的性質
- 色:カミントン閃石の色は、産出する場所や含まれる不純物によって異なりますが、一般的には黒色、暗緑色、褐色などを呈します。光沢はガラス光沢から金属光沢まで幅広く見られます。
- 条痕:条痕は白色から淡褐色です。
- 硬度:モース硬度は5〜6程度で、比較的脆い性質を持っています。
- 劈開:良好な{110}方向の劈開を持ち、約56度と124度の角度で交差する特徴的な劈開面を示します。
- 比重:比重は3.0〜3.4程度です。
産状と地質学的意義
火成岩中の産出
カミントン閃石は、主にアルカリ玄武岩、玄武岩質安山岩、ネフェリン閃石岩などのアルカリ火成岩中に産出します。これらの岩石は、マントル由来のマグマが地殻を上昇し、地表付近で噴出したものであることが多いです。カミントン閃石は、マグマの結晶化過程で形成される鉱物の一つとして、岩石中に斑晶や石基として含まれます。
特に、大陸地殻の薄い地域やリフト帯、あるいはホットスポット上の火山活動などで生成されるマグマに特徴的に見られることがあります。そのため、カミントン閃石の存在は、その火成岩が形成された地質学的環境を知る上で重要な指標となります。
変成岩中の産出
一部の低〜中圧下の変成岩、特に緑色片岩相や角閃岩相の変成岩中にもカミントン閃石が産出することがあります。これは、既存の岩石が熱や圧力によって再結晶する際に、カミントン閃石が生成される場合です。しかし、火成岩中の産状の方がより一般的で代表的です。
地球化学的意義
カミントン閃石の組成は、マグマの源(マントル由来か地殻由来か)、マグマの分化の度合い、そして周囲の岩石との相互作用(同化作用など)を反映します。特に、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ元素の含量は、マグマのアルカリ性度を示す指標となります。
また、カミントン閃石に含まれる微量元素の分析は、マグマの起源や進化過程、さらにはプレートテクトニクスとの関連性を解明するための貴重な情報源となります。
カミントン閃石の分類と関連鉱物
角閃石グループ内での位置づけ
カミントン閃石は、角閃石グループの中でも、特にナトリウムを多く含む(ナトリウム角閃石)グループに分類されます。角閃石グループは非常に多様であり、組成によってさらに細かく分類されています。カミントン閃石は、そのナトリウム含量の高さから、他の一般的な角閃石(例えば、黒雲母や緑閃石など)とは区別されます。
関連する閃石鉱物
カミントン閃石と組成的に類似している、あるいは関連する閃石鉱物には以下のようなものがあります。
- リヒター閃石 (Richterite):カミントン閃石と同様にナトリウムを多く含みますが、マグネシウムと鉄の比率やカリウムの含量が異なります。
- ユーディアライト (Eudialyte):これは角閃石ではなく、ケイ酸塩鉱物ですが、ナトリウムを多く含み、しばしばアルカリ火成岩中に共存します。
- アークセナイト (Arfvedsonite):これもナトリウムを多く含む角閃石で、カミントン閃石と似た産状を示すことがありますが、組成や結晶構造に違いがあります。
これらの鉱物との共存関係や組成の比較は、岩石の生成環境の推定に役立ちます。
その他
発見と命名
カミントン閃石は、1838年にアメリカ合衆国マサチューセッツ州のカミントン (Campton) という町で発見されました。この地名にちなんで、鉱物学者のウィリアム・ハガード(William Hallowes Miller)によって命名されました。これは、鉱物学における地名命名の典型例の一つです。
宝石としての利用
カミントン閃石は、その独特な黒色や暗緑色、そして時に見られる光沢から、装飾品や宝石として利用されることもあります。ただし、硬度がそれほど高くないため、傷つきやすいという側面もあります。カッティングや研磨によって、その美しさを引き出すことが可能です。
また、コレクターズアイテムとしても人気があり、珍しい産地の標本などは高値で取引されることがあります。
分析手法
カミントン閃石の正確な組成を決定するためには、電子線マイクロアナライザー (EPMA) やX線蛍光分析 (XRF) などの化学分析手法が用いられます。また、X線回折 (XRD) による結晶構造解析や、赤外分光法 (IR) による水酸基の同定なども行われます。
これらの分析結果は、カミントン閃石の識別、分類、そして地質学的解釈に不可欠な情報を提供します。
まとめ
カミントン閃石は、ナトリウムを豊富に含む特徴的な角閃石鉱物であり、主にアルカリ火成岩中に産出します。その組成、結晶構造、物理的性質は、火成岩の成因や地質学的環境を理解する上で重要な役割を果たします。また、関連する閃石鉱物との比較や、地球化学的な分析を通じて、マグマの起源や進化過程、プレートテクトニクスとの関連性など、地球科学の様々な謎を解き明かす手がかりを与えてくれる鉱物と言えます。宝石としての魅力も持ち合わせており、学術的・装飾的な両面で興味深い存在です。
