重土ブリュースター沸石:詳細・その他
概要
重土ブリュースター沸石(じゅうどブリュースターふっせき、英語: Brewsterite-Sr)は、沸石(ゼオライト)グループに属する鉱物の一つです。その名前は、著名な鉱物学者であるデイヴィッド・ブリュースター(David Brewster)にちなんで名付けられました。また、「重土」という名称は、この鉱物がストロンチウム(Sr)を主成分とすることに由来します。ストロンチウムは、化学元素記号Sr、原子番号38のアルカリ土類金属であり、その酸化物は「重土」とも呼ばれます。
沸石グループの鉱物は、アルミニウム、ケイ素、酸素からなる三次元的な骨格構造を持ち、その骨格の空隙に水分子や陽イオン(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムなど)が入り込んでいます。この陽イオンはイオン交換可能であることが、沸石の最も特徴的な性質の一つです。
重土ブリュースター沸石は、この沸石グループの中でも、ストロンチウムを主要な陽イオンとして含むグループ(ストロンチウム沸石グループ)に分類されます。化学組成は、一般的にSr(Al2Si6O16)・5H2Oと表されますが、ストロンチウム(Sr)の代わりにバリウム(Ba)が入り込んだバリウムブリュースター沸石(Brewsterite-Ba)も存在し、連続固溶体を形成しています。そのため、重土ブリュースター沸石は、ストロンチウムがバリウムよりも優位な組成を持つものと定義されます。
産状と生成環境
重土ブリュースター沸石は、主に変成岩、特に熱水変成作用や低級変成作用を受けた岩石中に産出します。また、花崗岩質ペグマタイトや hidrotermal脈(熱水脈)の空隙、火山岩の空洞(アミグダル)などでも発見されることがあります。これらの環境では、ケイ酸塩鉱物や炭酸塩鉱物などの鉱物が、熱水流によって再結晶化したり、新しい鉱物が沈殿したりする過程で生成します。ストロンチウムは、地球の地殻中に比較的少量存在する元素ですが、特定の熱水環境や堆積環境において、他の陽イオンと共に濃集することがあります。
生成環境としては、比較的高温低圧の条件が想定されます。熱水溶液中に溶存していたストロンチウムイオン、アルミニウムイオン、ケイ酸イオンが、特定の温度・圧力条件下で結晶化し、沸石特有の骨格構造を形成すると考えられています。しばしば、方解石、セリサイト(白雲母の一種)、プレナイト、緑簾石、方硼石(ほうほうせき)などの鉱物と共生します。
世界各地の鉱床から報告されており、代表的な産地としては、イタリアのサルデーニャ島、ルーマニア、アメリカ合衆国(ネバダ州、メキシコ)、日本(島根県、長野県など)が挙げられます。これらの産地では、しばしば美しい結晶形を示す標本が得られることがあります。
物理的・化学的性質
重土ブリュースター沸石は、一般的に単斜晶系の結晶構造を持ちます。結晶形は、柱状、針状、板状など様々ですが、しばしば双晶を形成することが特徴的です。透明から半透明で、色は無色、白色、淡黄色、淡ピンク色、淡褐色など、不純物の影響で多様な色合いを示します。光沢はガラス光沢から樹脂光沢です。
モース硬度は5.5~6程度で、比較的脆い性質を持っています。比重は2.3~2.5程度です。条痕(鉱物を粉末にしたときの色)は白色です。
沸石グループの鉱物の最大の特徴であるイオン交換能は、重土ブリュースター沸石にも見られます。骨格構造中のストロンチウムイオン(Sr2+)は、溶液中の他の陽イオン(例えば、カルシウムイオンCa2+、バリウムイオンBa2+、ナトリウムイオンNa+など)と交換される可能性があります。この性質は、吸着材や触媒としての応用が期待される理由の一つです。
加熱すると、結晶水が失われて構造が変化し、最終的には非晶質になります。酸には比較的安定ですが、強酸や高温条件下では分解する可能性があります。
識別
重土ブリュースター沸石を他の鉱物から識別する際には、いくつかの特徴が重要になります。まず、その結晶形、特に柱状や針状の結晶、そしてしばしば見られる双晶は、識別の一助となります。また、産状も重要で、熱水変成岩やペグマタイト、 hidrotermal脈などに特徴的に産出します。
化学的な分析やX線回折による構造解析が最も確実な識別方法ですが、フィールドでの観察においては、硬度、比重、条痕、そして苦味(ストロンチウム化合物の特徴的な味)の有無などが参考になります。ただし、味見は鉱物の性質を損なう可能性もあるため、慎重に行う必要があります。
同じくストロンチウムを含む鉱物としては、セレスタイト(SrSO4)が挙げられますが、セレスタイトは正方晶系であり、構造や結晶形、硬度、比重などが異なります。
その他
重土ブリュースター沸石は、その美しい結晶形から、鉱物コレクターの間で人気があります。特に、良好な結晶状態や特徴的な双晶を示す標本は、高い価値を持つことがあります。
学術的な観点からは、沸石グループの構造多様性やイオン交換メカニズム、地球化学的な挙動などを研究する上で重要な鉱物です。また、沸石一般に共通する性質として、吸着材や触媒、イオン交換材としての応用研究も進められています。重土ブリュースター沸石の持つイオン交換能や吸着特性を活かした、環境浄化技術や化学プロセスの開発への応用が期待される分野もあります。
ストロンチウムは、花火や信号炎管の赤色発光剤、テレビのブラウン管ガラス、特殊な合金、医薬品など、工業的に様々な用途があります。重土ブリュースター沸石がこれらのストロンチウム資源として直接利用されることは稀ですが、ストロンチウムの供給源となる鉱床の調査や研究において、その存在は重要視されることがあります。
まとめ
重土ブリュースター沸石は、ストロンチウムを主成分とする沸石グループの鉱物であり、変成岩や hidrotermal脈などの環境で生成します。単斜晶系の結晶構造を持ち、柱状や針状の結晶、双晶が特徴的です。イオン交換能という沸石特有の性質を持ち、その美しい結晶形や学術的な重要性から、鉱物学において注目される鉱物の一つです。工業的な応用への可能性も秘めています。
