石が書く解説
石が書く口コミ
自前のブログに感想を書いたので、いつも通りこちらにも転記。
内容の感想に関しては、旧版手に入れたときに書いたので。
再読して改めて、という感じです。
再読と言っても、訳者も変わりましたので色々違うのですが、読んだ感触としては、旧版とそれほど差異は感じません。自分はシャーロック=ホームズなどは角川版と創元推理社判と読み比べてますが、あれほどの雰囲気の違いは無いですね。
中古市場で大分プレミアがついてしまった旧版と違い、手に取りやすく、内容は遜色ないということで純粋に読みたい方はこちらがが良いと思います。
再版の企画を進めてくださった山田英春さんは模様石の収集家として有名ですが、その原点がこの本であったそうで、思い入れはひとしおだったそうです。
その熱意がこうして実を結んだことは、鉱物を愛好する一人として大変うれしく思います。本当にありがとうございました。
カイヨワの視点で見る模様石は普段自分がやるような、何々に見える、といった「見立て」とはまた一線違っていて興味深いです。
人の手で描かれた絵画と、自然が作り出し、見るためには切断研摩を必要とするこれら模様石とを真正面から比較し論じるというのは、なかなか自分では持てない視点ですので面白い。
お勧めの1冊です。
本書は約134頁にて4620円する書籍ですけれども、その価値は十分にあります。
また巻末の「訳者あとがき」も素晴らしく、カイヨワの著作集に存在する「ある流れ」と「無数の対角線」の存在を、読者に分かり易く伝えてくれるものとなっています(この「訳者あとがき」を読めばカイヨワの全ての著作を手にしたくなるに違いありません)。
それから、これも巻末記載の「本書記載図版についての補足」は、本編に登場する石に関する理解を大きく後押ししてくれる優れた補足となっているため「本編を読む前にも一通り目を通す」ことをおすすめさせていただきたいと思います。
それにしても、カイヨワが「石」と記す場合の「石」の豊かさよ・・・
頁をめくるたびに自らが盲目であることを思い知らされつつ、最後はカイヨワに(知性と人間性の違いを見せつけられて)ほぼオーバー・キルされ、目に涙を浮かべ唇を震わせながら読了。
(調べつつ、思考しつつ、134頁を読み終わるのにほぼひと月を要したことをここに告白しておきます)
夢幻、且つ理知的で精緻な美と知の世界に、しばし遊ばせていただきました。
新訳による刊行に、深く感謝いたします。
文章が知的で不思議な世界に吸い込まれます