砒灰ウラン石 (Arsenuranilite)
概要
砒灰ウラン石 (Arsenuranilite) は、ウラン、カルシウム、ヒ素、酸素、水素からなる複雑な組成を持つ鉱物です。化学式は Ca(UO2)2(AsO4)2·10-12H2O で表されます。この鉱物は、ウラン鉱床の二次生成物として、比較的低温の環境で形成されることが知られています。その名前は、組成に含まれる砒素 (Arseno-)、ウラン (Uranil-)、そしてその構造的特徴から付けられました。
発見と命名
砒灰ウラン石は、1979年にアメリカ合衆国コロラド州のディエゴ gunung (Dugway Proving Ground) で発見されました。発見者であるJ.R.Giulianiらによって、その独特の組成と結晶構造が報告され、命名されました。それ以来、世界各地のウラン鉱床で発見されており、ウラン鉱物の研究において重要な鉱物の一つとなっています。
物理的・化学的性質
色と光沢
砒灰ウラン石は、一般的に黄色からオレンジ色、あるいは黄緑色を呈します。その光沢はガラス光沢から樹脂光沢です。光の当たり方によっては、鮮やかな色合いを見せることがあります。
結晶系と形状
砒灰ウラン石の結晶系は斜方晶系です。結晶は通常、柱状あるいは針状の形状をしています。微細な単結晶として産出することが多く、肉眼で明瞭な結晶を観察できる機会は比較的少ないです。微細な結晶が集まって塊状になることもあります。
硬度と密度
モース硬度は2~3程度と比較的柔らかいです。これは、結晶構造中に多くの結晶水を含んでいることに起因すると考えられます。比重は、結晶水量の変動によって変化しますが、おおよそ3.1~3.5程度とされています。
劈開と断口
劈開は完全で、特定の方向に沿って容易に割れる性質があります。断口は貝殻状を示すことがあります。
透明度
一般的に半透明から不透明です。薄い結晶片であれば、光を通すこともあります。
熱的性質
加熱すると、結晶水を失って分解します。この際、色調が変化することがあります。
放射性
ウランを含有するため、放射性を持ちます。その放射能の強さは、ウランの含有量に依存します。
生成環境と共生鉱物
生成環境
砒灰ウラン石は、主に酸化還元環境が複雑に変化する、比較的低温の条件で形成される二次生成鉱物です。ウラン鉱床の風化帯や酸化帯において、原鉱物であるウラン鉱物(例:瀝青ウラン鉱、黄ウラン鉱など)が水や大気と反応して二次的に生成されます。
この生成過程においては、ヒ素も同時に供給される必要があります。ヒ素は、しばしば硫化鉱物(例:黄鉄鉱、ミスプル石など)の風化によって供給されます。そのため、砒灰ウラン石の産地では、ヒ素を含む硫化鉱物の存在が示唆されることがあります。
共生鉱物
砒灰ウラン石は、他の多くのウラン鉱物や二次生成鉱物と共生しています。代表的な共生鉱物としては、以下のようなものが挙げられます。
- ウラン鉱物: 瀝青ウラン鉱 (Uraninite)、黄ウラン鉱 (Gummite)、ドゥブナ石 (Dumontite)、ウラノスフェライト (Uranosphaerite) など。
- ヒ素鉱物: 砒鉄鉱 (Arsenopyrite) の風化生成物など。
- リン酸塩鉱物: リン灰ウラン石 (Autunite)、カルノ石 (Carnotite)、リン鉄ウラン石 (Zeunerite) など。
- バナジウム鉱物: カルノ石 (Carnotite) など。
- その他: 石英 (Quartz)、方解石 (Calcite)、粘土鉱物など。
これらの共生鉱物との組み合わせは、砒灰ウラン石の産状を理解する上で重要な手がかりとなります。
産状と産出地
産状
砒灰ウラン石は、主に砂岩や頁岩などの堆積岩中に胚胎するウラン鉱床の風化帯や酸化帯で見られます。これらの堆積岩中に存在するウラン鉱物が、地表付近で風化作用を受けることにより生成されます。しばしば、亀裂や空洞の充填物として、あるいは粒子の表面に付着する形で産出します。
微細な結晶として産出することが多いため、肉眼での識別は困難な場合が多く、顕微鏡下での観察や化学分析が必要となることがあります。
主な産出地
砒灰ウラン石は、世界各地のウラン鉱床から報告されています。主な産出地としては、以下のような場所が挙げられます。
- アメリカ合衆国: コロラド州、ユタ州、ニューメキシコ州など、特にコロラド高原周辺のウラン鉱床。
- カナダ: オンタリオ州、サスカチュワン州など。
- その他: カザフスタン、チェコ共和国、ポーランド、オーストラリアなど、ウラン鉱床が存在する地域。
これらの地域では、ウラン採掘の際に副産物として発見されることもあります。
鉱物学的意義と研究
ウラン鉱物の研究
砒灰ウラン石は、ウラン鉱物の化学的・鉱物学的な多様性を示す一例として重要です。その複雑な組成は、ウラン、ヒ素、カルシウムなどの元素が、水の存在下でどのように結合し、安定な構造を形成するかを理解する上で貴重な情報を提供します。
放射性廃棄物管理への応用
ウラン鉱物は、放射性廃棄物管理の観点からも注目されています。砒灰ウラン石のような二次生成鉱物は、地下深部への放射性物質の移行を遅らせる可能性を秘めています。その安定性や溶解性に関する研究は、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術の開発に貢献する可能性があります。
分析手法
砒灰ウラン石の同定や分析には、X線回折 (XRD)、電子線マイクロアナライザー (EPMA)、走査型電子顕微鏡 (SEM) などが用いられます。これらの手法により、結晶構造、元素組成、微細構造などが詳細に解析されます。
まとめ
砒灰ウラン石は、ウラン、カルシウム、ヒ素、酸素、水素からなる二次生成ウラン鉱物です。黄色からオレンジ色を呈し、柱状または針状の結晶として産出します。ウラン鉱床の風化帯において、低温・酸化還元環境下で形成され、様々なウラン鉱物や二次生成鉱物と共生しています。その独特の組成と生成過程は、ウラン鉱物の研究において重要な位置を占めるとともに、放射性物質の挙動理解や環境保全への応用も期待されています。
