普通輝石の詳細・その他
概要
普通輝石(Plagioclase)は、斜長石(Plagioclase)という鉱物グループの総称であり、単一の鉱物種を指すのではなく、カルシウム(Ca)とナトリウム(Na)を主成分とする長石グループの固溶体(こようたい)です。地殻中に最も豊富に存在する鉱物の一つであり、 igneous rocks(火成岩)、metamorphic rocks(変成岩)、sedimentary rocks(堆積岩)など、あらゆる種類の岩石中に見られます。その組成は、純粋な曹長石(Anorthite, CaAl2Si2O8)から純粋な灰長石(Albite, NaAlSi3O8)までの範囲で連続的に変化します。このカルシウムとナトリウムの置換比率によって、斜長石は様々な鉱物種に細分化されます。
化学組成と構造
普通輝石の化学組成は、一般的に (Na,Ca)(Al,Si)4O8 と表されます。より詳細には、CaAl2Si2O8(灰長石、Anorthite)と NaAlSi3O8(曹長石、Albite)の固溶体であり、その間の組成は以下の通りに区別されます。
- 曹長石(Albite, Ab):NaAlSi3O8
- オリゴクレース(Oligoclase):Ab70-90An10-30
- アンドラシン(Andesine):Ab50-70An30-50
- ラブラドライト(Labradorite):Ab30-50An50-70
- バイレウバイト(Bytownite):Ab10-30An70-90
- 灰長石(Anorthite, An):CaAl2Si2O8
これらの組成比は、アノザイト(Anorthite)成分の百分率で表されることが一般的です(例:An10は曹長石に近く、An90は灰長石に近い)。
普通輝石の結晶構造は、三斜晶系に属します。ケイ素(Si)とアルミニウム(Al)が酸素(O)と四面体(SiO4, AlO4)を形成し、これが連結して三次元的な骨格構造を構築します。この骨格の空隙に、ナトリウム(Na)イオンやカルシウム(Ca)イオンが位置しています。Na+イオンは比較的サイズが小さく、Ca2+イオンは比較的サイズが大きいため、これらのイオンが互いに置換することで、連続的な固溶体系列が形成されます。
物理的性質
モース硬度 は 6 ~ 6.5 であり、比較的硬い鉱物です。比重 は 2.62 ~ 2.76 の範囲で、組成によってわずかに変化します(カルシウム(Ca)が多くなるほど比重は大きくなる傾向があります)。
劈開(へきかい) は2方向にほぼ直角(約 90 度)に発達しており、これは長石グループに共通する特徴です。この劈開に沿って割れると、角張った破断面を示します。
光沢 はガラス光沢ですが、風化によって白亜光沢や土状光沢を示すこともあります。
色 は無色、白色、灰色、淡黄色、淡紅色など、非常に多様です。これは、微量に含まれる不純物や、構造中の欠陥、あるいは双晶による光の干渉などが原因です。特に、ラブラドライトには、特定の角度から見るとシラー(Schiller)と呼ばれる青色、緑色、黄色、赤色などの虹色が現れるものが存在し、宝石としても利用されます。
条痕 は白色です。
産状と岩石
普通輝石は、地殻中で最も普遍的な鉱物であり、その産状は極めて多様です。
- 火成岩:玄武岩(Basalt)、安山岩(Andesite)、閃長岩(Syenite)、花崗岩(Granite)など、塩基性岩から酸性岩まで幅広く見られます。斜長石の組成は、マグマの性質(SiO2含有量、温度、圧力など)によって決まります。一般的に、塩基性岩(SiO2が少ない)にはカルシウム(Ca)に富む灰長石(Anorthite)に近い組成のものが多く、酸性岩(SiO2が多い)にはナトリウム(Na)に富む曹長石(Albite)に近い組成のものが多くなります。
- 変成岩:角閃岩(Amphibolite)、片麻岩(Gneiss)、結晶片岩(Schist)など、広範な変成岩中に存在します。
- 堆積岩:砂岩(Sandstone)や泥岩(Mudstone)など、他の岩石が風化・侵食されてできた堆積物中にも、砕屑粒子(さいせつりゅうし)として含まれます。
特に、月(Moon)のレゴリス(月の砂)の主要な成分の一つとしても知られています。
識別点
普通輝石を識別する際の重要な特徴は以下の通りです。
- 劈開:2方向にほぼ直角に発達する劈開は、石英(Quartz)や方解石(Calcite)など他の鉱物との識別において重要です。
- 色:無色から白色、灰色が一般的ですが、ラブラドライトのシラーは特徴的です。
- 硬度:ナイフで傷がつく程度(硬度 5.5)よりも硬い(硬度 6~6.5)ため、比較的容易に識別できます。
- 双晶:普通輝石は、カールスバッド双晶、アベ双晶、バンディ双晶などの様々な種類の多形双晶(たけいそうしょう)を形成することが多く、顕微鏡下での観察や、場合によっては肉眼でも、特徴的な条線(「パーキン線」と呼ばれる)として観察されることがあります。
石英(Quartz)は劈開がなく、普通輝石よりも硬度が高いため、劈開や硬度で区別できます。カリ長石(K-feldspar)も2方向に劈開がありますが、角度が約 90 度ではなく、より鈍角(約 120 度と 60 度)であり、また、カリ長石には普通輝石のようなパーキン線は通常見られません。
変種と応用
普通輝石の変種の中でも、特に知られているのはラブラドライトです。ラブラドライトは、その美しいシラーから、宝飾品として人気があります。スペクトロライト(Spectrolite)と呼ばれる、より鮮やかな虹色を示すラブラドライトの変種も存在します。
産業的な応用としては、普通輝石はセラミックスやガラスの製造原料として利用されます。特に、フィラー(充填材)として、塗料、プラスチック、ゴムなどの性能向上に貢献します。
また、地質学においては、普通輝石の組成は、岩石の形成過程や変成作用の条件を知るための重要な指標となります。
まとめ
普通輝石は、地殻を構成する主要な鉱物であり、その組成の多様性と岩石中での普遍性から、地質学的に非常に重要な鉱物です。カルシウムとナトリウムの置換比率によって細分化され、それぞれが異なる物理的性質や産状を示します。特にラブラドライトは、その美しい虹色で宝飾品としても価値があります。普通輝石の理解は、岩石の成因や地球の内部活動を解明する上で不可欠です。
