アンブリゴ石:詳細・その他
概要
アンブリゴ石(Ambligonite)は、リン酸塩鉱物の一種であり、その化学組成は LiAl(PO4)F と表されます。フッ素と水酸基(OH)が同型置換する固溶体系列を形成し、フッ素成分が多いものをアンブリゴ石、水酸基成分が多いものをモンテブラ石(Montebrasite)と呼びますが、実際には両者の連続的な組成変化が見られます。この鉱物は、リチウム(Li)の重要な源鉱石として知られており、特に一次リチウム資源として注目されています。
その名称は、ギリシャ語の「amblys」(鈍い)と「gonia」(角度)に由来しており、これは劈開面が鈍角をなすことにちなんでいます。産出地は世界各地に点在していますが、経済的に重要な鉱床は限られています。
物理的・化学的性質
結晶系と結晶構造
アンブリゴ石は三斜晶系に属し、その結晶構造は、リン酸テトラヘドラ(PO4)とアルミニウム(Al)の八面体が、リチウム(Li)イオンを介して連結した複雑な三次元ネットワークを形成しています。この構造中に、フッ素(F)や水酸基(OH)が配置されます。
色と光沢
アンブリゴ石の結晶は、無色、白色、淡黄色、淡青色、淡灰色など、様々な色調を呈します。不純物の種類や量によって色合いが変化することがあります。光沢は、ガラス光沢または真珠光沢を示します。
硬度と劈開
モース硬度は、5.5~6.5程度であり、比較的脆い鉱物です。劈開は完全で、{001}面および{110}面に沿って生じますが、前述の通り、鈍角をなすのが特徴です。
比重
比重は、3.0~3.1程度です。これは、鉱物としては標準的な範囲と言えます。
融点
アンブリゴ石は、加熱すると分解します。融点ではなく、分解温度として扱われ、約1000℃以上で分解が始まります。
溶解性
通常、酸にはほとんど溶けませんが、濃硫酸には徐々に溶けます。
産状と鉱床
成因
アンブリゴ石は、主にペグマタイト(花崗岩質マグマの結晶化終期に生成される粗粒の火成岩)中に、リチウムやリン、アルミニウムに富む場所で生成されます。特に、グラニティックペグマタイト(花崗岩質のペグマタイト)に多く産出します。また、熱水鉱床や堆積岩中にも見られることがあります。
共生鉱物
ペグマタイト中では、クォーツ(石英)、長石類(正長石、斜長石)、雲母類(リチオフィライト、モスコバイト)、トルマリン、スポジュメン、リチオフィル石、リン灰石など、様々な鉱物と共生します。これらの共生関係は、鉱床の生成環境を知る上で重要な手がかりとなります。
主要産地
経済的に重要なアンブリゴ石の産地としては、以下のような場所が挙げられます。
- アメリカ(メイン州、サウスダコタ州など)
- ブラジル(ミナスジェライス州など)
- ポルトガル(フンシャル、モンテブラスなど)
- スペイン
- アルゼンチン
- ナミビア
- ジンバブエ
これらの地域で産出されるアンブリゴ石は、リチウム資源として採掘されています。
利用
リチウム資源
アンブリゴ石の最も重要な用途は、リチウムの供給源となることです。リチウムは、リチウムイオン電池の主要な原料であり、スマートフォン、ノートパソコン、電気自動車(EV)などの普及に伴い、その需要は急速に高まっています。アンブリゴ石からリチウムを抽出・精製するプロセスは、他のリチウム鉱石(スポジュメンなど)と同様に行われます。
アンブリゴ石は、スポジュメンに比べてリチウム含有量がやや低い傾向がありますが、その産状や経済性によっては、重要なリチウム供給源となり得ます。
その他
リチウム資源としての利用が主ですが、その美しい色合いから、宝石や装飾品としても稀に利用されることがあります。ただし、その脆さや硬度の関係から、耐久性には限界があります。
また、科学研究においては、その特殊な組成や構造から、地球化学や鉱物学の研究対象としても扱われます。
採掘と精製
アンブリゴ石は、主に露天掘りまたは坑内掘りによって採掘されます。採掘された原鉱石は、粉砕・選鉱を経て、リチウム含有量の高い部分が分離されます。その後、化学的なプロセスを経て、リチウム化合物(炭酸リチウム、水酸化リチウムなど)が抽出されます。この抽出プロセスは、高度な技術と設備を必要とします。
まとめ
アンブリゴ石は、リチウムの重要な源鉱石として、現代社会に不可欠なリチウムイオン電池の製造に貢献する鉱物です。ペグマタイト鉱床に生成され、その物理的・化学的性質は、リチウム資源としての価値を決定づける要因となります。世界各地に産出地はありますが、経済的な採掘が可能な鉱床は限られています。リチウム需要の増加に伴い、アンブリゴ石の重要性も今後ますます高まっていくと考えられます。
