サニディン:詳細・その他
サニディンとは
サニディン(Sanidine)は、カリウム長石(KAlSi3O8)の高温型多形体であり、斜長石系列やアルカリ長石系列に属する鉱物です。一般的には、火山岩、特に流紋岩やデイサイトなどの珪長質火山岩中に、斑晶として産出することが多いのが特徴です。
鉱物学的な分類では、斜長石系列とアルカリ長石系列の中間に位置づけられることがありますが、その構造は高温型であり、低温型である正長石(Orthoclase)とは区別されます。サニディンは、高温下での結晶化過程を経て形成され、冷却速度が速い環境で安定します。
その名前は、ギリシャ語の「sani」(プラットフォーム、棚)と「eidos」(形)に由来しており、結晶がしばしば平たい板状や薄片状になることにちなんでいます。
化学組成と結晶構造
サニディンの化学組成は、基本的にはKAlSi3O8ですが、ナトリウム(Na)がカリウム(K)の一部を置換することもあります。この置換の程度によって、エンドメンバーである正長石(KAlSi3O8)とアルバイト(NaAlSi3O8)の間の固溶体として存在します。しかし、サニディンは高温型であるため、一般的にはカリウムに富む組成を示します。
結晶構造においては、サニディンは単斜晶系に属します。低温型である正長石は、同じく単斜晶系ですが、その結晶格子はより整然とした構造を持ちます。サニディンは高温下で形成されるため、その結晶格子は無秩序な状態(disordered state)にあり、アルカリ金属イオン(K+、Na+)が格子サイト内でランダムに配置されています。これは、高温下での原子の熱運動が大きいためです。
冷却が速い場合、この高温型の構造がそのまま準安定に保持され、サニディンとして観察されます。冷却が遅い場合は、より安定な構造である正長石へと転移する傾向があります。
物理的・化学的性質
サニディンは、一般的に無色から白色、淡黄色、あるいは淡い灰色を呈します。透明なものから半透明なものまであり、ガラス光沢を持つことが多いです。結晶は、しばしば平たい板状、薄片状、または双晶を形成します。双晶は、カールスバッド双晶やアベ双晶などが一般的です。
モース硬度は6から6.5であり、比較的硬い鉱物です。比重は、組成によって多少変動しますが、おおよそ2.55から2.65程度です。劈開は{001}と{010}に良好に発達しており、この2方向に直交に近い劈開面を持ちます。断口は不規則または貝殻状を示すことがあります。
化学的には、長石鉱物として比較的安定していますが、強酸や高温の水溶液による分解を受けることがあります。特に、加水分解によってカオリナイトなどの粘土鉱物に変化することもあります。
産状と産地
サニディンは、主に火山活動に伴って形成されます。特に、石英に富むマグマが急冷されてできる流紋岩やデイサイトなどの珪長質火山岩中に、斑晶としてよく見られます。これらの岩石は、しばしば火砕流堆積物や溶岩流として産出します。
また、ペグマタイトや、比較的高温で形成された変成岩中にも稀に見られることがあります。しかし、その特徴的な高温型構造は、急冷という条件が重要であるため、一般的には火山岩での産出が最も典型的です。
世界各地の火山地域で産出しますが、特に有名な産地としては、イタリアのヴェスヴィオ火山、ドイツのアイフェル地方、アメリカのイエローストーン国立公園などが挙げられます。これらの地域では、サニディンを含む火山岩が広く分布しています。
識別と鑑別
サニディンを識別する上で重要なのは、その産状と結晶形、そして劈開です。火山岩中に見られる、平たい板状あるいは薄片状の無色から淡黄色の結晶で、良好な劈開を持つ場合、サニディンである可能性が高いです。特に、カールスバッド双晶が確認できると、より確実な鑑別につながります。
他の長石鉱物との鑑別が重要となる場合があります。例えば、低温型である正長石(Orthoclase)は、しばしばより肥大した結晶形や、ペルクライン双晶、バイクラール双晶などの双晶を示すことがあります。また、構造の違いから、X線回折パターンで明確に区別されます。
斜長石系列の鉱物(アルビート、オリゴクレースなど)も、同様に火山岩中に産出することがありますが、それらは一般的に線状の双晶(カーlsbad双晶やアベ双晶とは異なる)を示すことで区別されます。また、組成分析や光学的な性質(屈折率、複屈折など)によっても鑑別されます。
用途と重要性
サニディン自体が、直接的な産業用途として広く利用されることは稀です。しかし、長石鉱物全体としては、セラミックス、ガラス、研磨剤などの原料として非常に重要です。サニディンも、これらの長石資源の一部として、あるいは長石鉱物研究の対象として間接的な重要性を持っています。
地質学的な観点からは、サニディンは火山岩の形成過程や、マグマの結晶化条件を理解する上で重要な手がかりを与えます。高温下で形成され、急冷された環境を示す指標となるため、古環境の推定などに役立てられます。
また、美しい結晶や特徴的な双晶を示すサニディンは、鉱物コレクターの間でも人気があります。
まとめ
サニディンは、カリウム長石の高温型多形体であり、主に流紋岩やデイサイトなどの珪長質火山岩中に斑晶として産出する鉱物です。その特徴は、高温下で形成される無秩序な結晶構造にあり、急冷によってその構造が準安定に保持されています。平たい板状や薄片状の結晶形、良好な劈開、そしてカールスバッド双晶などが識別点となります。直接的な産業利用は少ないものの、長石鉱物としての汎用性や、火山活動や地質学的条件を理解する上での重要性を持っています。
