藍閃石(らんせんせき)の詳細・その他
鉱物としての概要
藍閃石(らんせんせき、英語: glaucophane)は、ケイ酸塩鉱物の一種であり、青色を呈することが特徴的な鉱物です。化学式はNa2Mg3Al2Si8O22(OH)2で表され、角閃石グループに属します。
藍閃石は、特に広域変成作用を受けた岩石中に産出することが多く、その存在は、その岩石が経験した高圧・低温の変成環境を示す指標鉱物となります。そのため、地質学、特に変成岩の研究において非常に重要な鉱物とされています。
その美しい青色は、微量の鉄やチタンに起因すると考えられていますが、組成によっては青みが薄かったり、緑色を帯びることもあります。この色の多様性も、藍閃石を興味深い鉱物たらしめている要因の一つです。
化学組成と構造
藍閃石の化学組成は、Na2Mg3Al2Si8O22(OH)2と表されます。これは、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、酸素(O)、そして水酸基(OH)から構成されることを示しています。
角閃石グループに属する藍閃石は、単斜晶系の結晶構造を持っています。その構造は、ケイ素-酸素四面体の連鎖が、金属イオン(この場合はMgやAl)とナトリウムイオンによって架橋された、二重のケイ酸鎖構造を特徴としています。
組成は比較的複雑であり、Na、Mg、Alの比率が変化することで、類似した組成を持つ他の角閃石グループの鉱物(例:リーベカイト)と固溶体を形成することがあります。また、鉄(Fe)やチタン(Ti)などの不純物が微量含まれることで、結晶の色合いに変化が生じます。
物理的・化学的性質
藍閃石の主な物理的・化学的性質は以下の通りです。
- 色:青色、藍色、紫がかった青色、緑がかった青色など。
- 光沢:ガラス光沢。
- 透明度:半透明から不透明。
- 結晶系:単斜晶系。
- 劈開:{210}に2方向、約56度と124度の角度で完全。
- 断口:貝殻状ないし不平坦。
- モース硬度:5.5 – 6.0。
- 比重:3.1 – 3.3。
- 条痕:白色。
- 多色性:一般的に弱い。
化学的には、酸に対して比較的安定していますが、高温では分解することがあります。
産状と生成環境
藍閃石は、主に変成岩中に産出します。特に、広域変成作用を受けた泥質岩や火成岩の変成岩中に特徴的に見られます。
藍閃石が生成される環境は、高圧かつ低温という特殊な条件が要求されます。このような条件は、プレートの沈み込み帯や、断層運動によって岩石が地下深くで圧縮されるような地域で形成されやすいです。
具体的には、以下の変成帯でよく見られます。
- 藍閃石片岩相(Glaucophane schist facies):藍閃石が安定して生成する温度・圧力条件を示す変成相であり、藍閃石が主要な造岩鉱物となります。
- エクロジャイト相(Eclogite facies):より高圧な条件で、藍閃石が他の鉱物(例:オンファス輝石)と共生することがあります。
これらの変成岩は、地表に露出するまでに、侵食や隆起などの地質学的プロセスを経て運ばれてきます。そのため、藍閃石の産出場所は、過去のプレートテクトニクス活動の痕跡を物語る重要な手がかりとなります。
産地
世界各地で藍閃石の産出が報告されていますが、特に有名な産地としては以下のような場所が挙げられます。
- 日本:四国(三波川変成帯)、紀伊半島、長野県、山梨県など、日本各地の変成岩地域で産出します。特に三波川変成帯は、藍閃石片岩の典型的な産地として知られています。
- イタリア:リパリ諸島(シチリア島近海)は、美しい青色をした藍閃石の産地として有名です。
- アメリカ:カリフォルニア州(コーストレンジ)、ワシントン州。
- カナダ:ブリティッシュコロンビア州。
- フランス:ピレネー山脈。
- オーストリア:タークリス(Tauern)。
これらの産地で採集される藍閃石は、その美しさから、愛好家やコレクターの間でも人気があります。
特徴と識別
藍閃石を識別する上で最も重要な特徴は、その鮮やかな青色と、高圧・低温変成岩中に産出するという地質学的背景です。他の青色を呈する鉱物(例:アズライト、ラピスラズリ、藍玉)とは、その結晶系、硬度、劈開、そして産状において明確に区別されます。
特に、変成岩中の細粒な結晶として産出することが多く、肉眼では青い筋や斑点のように見えることがあります。顕微鏡下では、その特徴的な双晶構造や、他の変成鉱物(例:白雲母、石榴石、ソーブ石)との共生関係を観察することで、より詳細な識別が可能になります。
また、組成によっては、緑色を帯びたリーベカイト(Riebeckite)と固溶体を形成することがあり、これらの識別には化学分析が必要となる場合もあります。
用途と研究
藍閃石自体が、直接的な工業用途を持つことは稀です。しかし、その存在は地質学的な研究において極めて重要です。
- 変成環境の指標:藍閃石の生成条件は、その岩石が経験した圧力・温度条件を推定するための重要な指標となります。これは、地球の内部構造やプレートテクトニクスの歴史を解明する上で不可欠な情報です。
- 地質学的地域区分:藍閃石を含む変成帯は、その地域特有の地質学的発達史を持つことを示唆し、地質図の作成や地質構造の理解に役立ちます。
- 鉱物学的な研究:組成変化や結晶構造、形成メカニズムの研究は、ケイ酸塩鉱物の多様性や鉱物生成論の発展に貢献しています。
また、その美しい青色から、一部の愛好家によって装飾品やコレクションとして収集されることもあります。
まとめ
藍閃石は、その鮮やかな青色と、高圧・低温という特殊な変成環境で生成されるという特徴を持つ、変成岩中に産出する重要な鉱物です。プレートテクトニクスの研究において、過去の地質学的出来事を解き明かすための貴重な手がかりを提供します。日本国内でも四国をはじめとする各地で産出しており、その美しさから鉱物愛好家の間でも注目されています。その存在は、地球のダイナミックな活動を理解する上で、欠かせない存在と言えるでしょう。
