天然石

普通角閃石

普通角閃石

普通角閃石(ふつうかくせんせき)は、斜方輝石と並んで玄武岩や安山岩などの火山岩によく見られる造岩鉱物です。また、深成岩や変成岩にも産出します。その名前の由来は、ギリシャ語の「光線」を意味する「アムフィボス」に由来しており、これは角閃石グループの鉱物の多くが放射状または柱状の結晶形をとることから来ています。

鉱物学的特徴

普通角閃石は、ケイ酸塩鉱物の一種であり、角閃石グループに属する複斜構造を持つ単斜晶系の鉱物です。化学組成は、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウム、チタン、ケイ素、酸素、水素などから構成されており、その組成は固溶体を形成するため、幅広く変化します。一般的には、鉄やマグネシウムの含有量によって、黒色や緑色、褐色など様々な色調を示します。特に鉄を多く含むものは黒色になりやすく、マグネシウムを多く含むものは緑色になりやすい傾向があります。

結晶構造

普通角閃石の結晶構造は、ケイ酸四面体が鎖状に連なった単鎖構造とは異なり、二列の単鎖が酸素原子を共有して帯状になった複鎖構造(シクロケイ酸塩とは異なります)を有しています。この複鎖が金属陽イオンによって束ねられ、斜方晶系の柱状または針状の結晶を形成します。結晶面には完全な解理が二方向に約56度と124度で発達しており、これが角閃石の特徴的な劈開として観察されます。この劈開は、石英の貝殻状断口とは対照的です。

物理的・化学的性質

普通角閃石のモース硬度はおよそ5から6であり、ナイフで傷をつけることが可能です。比重は2.9から3.5程度です。融点は1000℃以上と高く、熱に対して比較的安定しています。酸には、特に塩酸には反応しませんが、フッ化水素酸には溶けます。風化に対しては、石英や長石などに比べてやや弱く、緑泥石や粘土鉱物などに変化しやすい性質があります。

産状と分布

普通角閃石は、マグマが冷却する過程で晶出する岩漿鉱物として、深成岩(花崗岩、閃緑岩、粗面岩など)や火山岩(安山岩、流紋岩など)に普遍的に産出します。火山岩においては、斑状の結晶として岩石中に散見されることが多いです。変成岩では、広域変成作用や接触変成作用によって形成される片麻岩、角閃岩、片岩などに豊富に含まれます。片岩や角閃岩は、角閃石を主成分とする変成岩の代表例です。

普通角閃石は地球の地殻に広く分布しており、大陸から海洋のプレートに至るまで、様々な地質環境で確認されています。特に火山活動が活発な地域や、山脈などの造山運動が起こっている地域で多く産出します。例えば、日本の火山や山地にも普通角閃石を含む岩石は数多く存在します。

識別と鑑別

普通角閃石を識別する上で重要な特徴は、その色(黒~緑)、光沢(ガラス~金属)、劈開(二方向、約56度と124度)、結晶形(柱状、針状)です。肉眼での識別は難しい場合もあり、場合によっては偏光顕微鏡での観察が必要となります。

類似鉱物との鑑別

普通角閃石と似た鉱物には、輝石(斜方輝石、単斜輝石)や雲母(黒雲母)などがあります。

  • 輝石:劈開が二方向で約90度と90度であり、角閃石の約56度と124度とは異なります。また、普通角閃石に見られる光沢が弱い点も鑑別のポイントです。
  • 黒雲母:劈開が一方向に完全に発達しており、薄く剥がれやすい性質があります。これは角閃石の二方向の劈開とは明らかに異なります。

鉱物の鑑定においては、色、光沢、劈開、結晶形といった肉眼で観察できる特徴に加え、硬度、比重、磁性(鉄を含むものは弱い磁性を示すことがある)なども参考にされます。最終的な識別には、顕微鏡による観察やX線回折などの分析が必要となることもあります。

その他の情報

用途と重要性

普通角閃石は、それ自体が直接的な工業・商業的用途を持つことはまれですが、造岩鉱物としての重要性は非常にです。地球の岩石の組成を理解する上で不可欠な鉱物であり、火山活動の歴史や地殻の変動を解明する鍵となります。岩石の分類や識別において、普通角閃石の存在や量は重要な指標となります。

また、変成岩の主成分である角閃岩は、建築材料や装飾石材としても利用されることがあります。ただし、普通角閃石が主となる角閃岩は硬度が比較的高く、加工が容易ではないため、汎用性は限定されます。

鉱物収集

普通角閃石は、その多様な色調や結晶の形態から、鉱物コレクターに人気のある鉱物の一つです。特に、美しい、柱状の結晶や、放射状に集まったクラスターなどは魅力的です。産地によって組成が異なるため、特定の産地の普通角閃石を収集するコレクターもいます。

地質学における意義

普通角閃石は、火成岩や変成岩の形成される温度や圧力の条件を推定する上で重要な情報を提供します。例えば、普通角閃石が安定して存在できる条件は、ある程度限定されており、その組成変化も熱力学的な条件を反映しています。地質学研究において、普通角閃石の分析は岩石の成因や地質の履歴を解明するための貴重な手段となります。

まとめ

普通角閃石は、地球の地殻に広く分布する重要な造岩鉱物です。その特徴的な劈開、色調、結晶の形態は、識別のポイントとなります。火成岩、変成岩を問わず多くの岩石に見られ、地質学的な研究において貴重な情報を提供します。鉱物コレクターにとっても魅力的な対象であり、その多様性と普遍性から、鉱物学における「縁の下の力持ち」とも言える存在です。