天然石

透閃石

透閃石(とうせんせき)の詳細・その他

鉱物としての透閃石

透閃石(とうせんせき、Tremolite)は、鉱物学において、角閃石(かくせんせき、Amphibole)グループに属する鉱物です。

化学組成と結晶構造

透閃石の化学組成は、一般的に Ca2Mg5Si8O22(OH)2 と表されます。これは、カルシウム (Ca)、マグネシウム (Mg)、ケイ素 (Si)、酸素 (O)、そして水酸基 (OH) から構成されていることを示しています。

角閃石グループの鉱物は、一般的に二重鎖状(ダブルチェーン)のケイ酸塩鉱物であり、その結晶構造は特徴的です。透閃石もこの二重鎖構造を持ち、その構造中に Mg が多く含まれることから、マグネシウム角閃石に分類されます。マグネシウムが鉄 (Fe) に置換されることで、アクチノ閃石 (Actinolite) へと連続的に固溶します。この固溶系列は、透閃石からアクチノ閃石へとマグネシウムが鉄に置き換わっていく過程を反映しています。

物理的・化学的性質

透閃石は、一般的に無色から淡緑色、灰色、白色などを呈します。透明から半透明で、ガラス光沢を持ちます。モース硬度は 5~6 で、比較的脆い性質を持っています。

劈開(へきかい)は、角閃石グループに特徴的な二方向の劈開を持ち、約 120 度と 60 度の角度で割れやすい性質があります。これは、その結晶構造に由来します。

比重は 2.9~3.4 程度で、融点は 1400~1500 ℃ と比較的高温です。

化学的には、酸には比較的溶けにくいですが、加熱すると分解します。結晶水(OH)を含むため、高温で加熱すると水が放出されます。

産状と生成環境

透閃石は、主に変成岩中に産出する鉱物です。特に、苦灰岩(ドロマイト質石灰岩)や蛇紋岩(サーペンティナイト)などのマグネシウムを多く含む堆積岩が、接触変成作用や広域変成作用を受けることによって生成されます。

変成作用との関連

接触変成作用では、マグマの貫入によって高温にさらされた岩石中に生成されます。例えば、石灰岩やドロマイト質石灰岩がマグマに接触すると、熱によって反応が進み、透閃石や他の変成鉱物が生成されます。

広域変成作用では、プレートの沈み込みなどによって広範囲にわたる圧力と温度の上昇によって生成されます。この場合も、マグネシウムを多く含む原岩が変成されることで透閃石が生成されます。

共生鉱物

透閃石は、その生成環境に応じて、様々な鉱物と共生します。代表的な共生鉱物としては、以下のものが挙げられます。

  • 石英 (Quartz)
  • 方解石 (Calcite)
  • 白雲母 (Muscovite)
  • 緑泥石 (Chlorite)
  • ルチル (Rutile)
  • ザクロ石 (Garnet)
  • プレナイト (Prehnite)

特に、蛇紋岩の変成作用で生成される透閃石は、石綿(アスベスト)の一種である「直閃石綿」(ちょくせんせきわた)の主成分となることがあり、注意が必要です。

用途と重要性

透閃石は、その物理的・化学的性質から、いくつかの用途があります。

建材・耐火材

かつては、その耐熱性、絶縁性、強度から、石綿(アスベスト)として建材や断熱材、耐火材などに広く利用されていました。しかし、近年、健康被害が明らかになり、その使用は厳しく制限されています。

工業用途

一部の工業分野では、その特性を活かした利用が検討されています。例えば、プラスチックやゴムの充填剤としての利用や、セラミックスの原料としての利用などが研究されています。

鑑賞用・宝飾品

美しい緑色を呈する透閃石の中には、鑑賞用や宝飾品として利用されるものもあります。ただし、一般的に流通している宝飾品としては、翡翠(ひすい)の主要成分である透閃石(ひすい輝石、ジェダイト)とは異なる鉱物です。宝石として価値のあるものは、その色や透明度、希少性によります。

地質学的な指標

透閃石の存在やその化学組成は、地質学的な研究において、変成作用の温度や圧力条件、原岩の組成などを推定するための重要な指標となります。

関連する鉱物と区別

透閃石は、角閃石グループに属する鉱物であり、いくつかの類似した鉱物と区別する必要があります。

アクチノ閃石 (Actinolite)

前述の通り、透閃石はアクチノ閃石と連続的な固溶系列を形成しています。アクチノ閃石は、透閃石よりも鉄の含有量が多く、そのため緑色がより濃くなる傾向があります。肉眼での区別は難しい場合が多く、化学分析などによって区別されます。

透閃石石綿 (Tremolite Asbestos)

透閃石は、繊維状に析出すると「直閃石綿」と呼ばれる石綿の一種となります。この石綿は、その微細な繊維が肺に入り込むことで、深刻な健康被害を引き起こすことが知られています。そのため、透閃石の産状によっては、その取り扱いに十分な注意が必要です。

閃石族 (Amphibole Group)

角閃石グループには、透閃石やアクチノ閃石以外にも、黒雲母(くろうんも、Biotite)や角閃石(ホーンブレンド、Hornblende)など、多くの鉱物が含まれます。これらの鉱物は、それぞれ化学組成や結晶構造、産状などが異なります。

まとめ

透閃石は、マグネシウムを主成分とする角閃石グループの鉱物であり、主に変成岩中に産出します。その無色から淡緑色の色合い、ガラス光沢、そして特徴的な結晶構造は、鉱物学的に興味深い存在です。かつては石綿として建材などに利用されていましたが、健康被害が明らかになった現在では、その使用は厳しく制限されています。

地質学的な指標としての重要性や、一部工業用途、鑑賞用としての価値も有しています。透閃石を理解することは、変成岩の生成過程や、鉱物資源の利用、そして環境問題にも関わるため、多角的な視点からの探求が重要です。