天然石

単斜角閃石

単斜角閃石:鉱物学における詳細と応用

単斜角 इससे?

単斜角閃石(たんしゃかくせんせき、英: Monoclinic Amphibole)は、広範な鉱物グループを指す総称であり、その中でも最も一般的な成分鉱物として知られています。化学組成や構造に多様性が見られ、地質学、鉱物学、そして材料科学の分野で重要な研究対象となっています。

鉱物学的な特徴

化学組成と構造

単斜角閃石は、一般的に Ca2(Mg,Fe)5(Si,Al)8O22(OH,F)2 という化学式で表されます。この式は、カルシウム (Ca)、マグネシウム (Mg)、鉄 (Fe)、ケイ素 (Si)、アルミニウム (Al)、酸素 (O)、そして水酸基 (OH) またはフッ素 (F) から構成されることを示しています。しかし、この化学式はあくまで代表的なものであり、MgとFeの比率、SiとAlの置換、さらにはNa、K、Mn、Tiなどの微量元素の混入によって、数多くの種類が存在します。

構造的には、単斜角閃石は 直鎖状のケイ酸塩鉱物 に分類されます。その特徴的な構造は、SiO4四面体 が互いに連結して形成される 二重鎖構造 です。この二重鎖が、陽イオン(Ca, Mg, Feなど)を介して結合し、三次元的な網目構造を形成しています。この二重鎖構造が、角閃石グループの鉱物群に共通する特徴であり、劈開面が互いに約120度と60度で交差する理由でもあります。

結晶系と形態

単斜角閃石という名前の通り、その結晶系は 単斜晶系 です。結晶軸のうち、2つの軸が直交せず、残りの1つの軸も他の2つの軸に対して斜めに位置します。この非対称な結晶軸が、単斜角閃石の結晶成長に影響を与えます。

単斜角閃石の結晶形態は、柱状、針状、放射状など、様々です。しばしば、光沢のある、滑らかな面を持つ結晶として産出します。色調も、黒色、緑色、褐色、無色と多様であり、これは主に鉄分の含有量や酸化還元状態によって変化します。

物理的性質

単斜角閃石の モース硬度 は一般的に5.5~6と、比較的硬い部類に入ります。比重は3.0~3.4程度です。融点は高く、高温に耐える性質を持っています。また、劈開は 完全 で、特定の方向に沿って割れやすい性質があります。この劈開は、上述した二重鎖構造に由来しています。

代表的な単斜角閃石の種類

単斜角閃石グループには、実に多くの鉱物種が含まれています。その中でも特に代表的なものをいくつか挙げます。

1. 透閃石 (Tremolite)

透閃石は、マグネシウムを主成分とする単斜角閃石です。化学組成は Ca2Mg5Si8O22(OH)2 で、鉄分がほとんど含まれていません。そのため、無色または淡い緑色を呈します。蛇紋岩や大理石などの変成岩中に産出することが多いです。アスベストの一種としても知られていますが、クリソタイルアスベストとは構造が異なります。

2. 鉄閃石 (Actinolite)

鉄閃石は、透閃石の鉄(Fe)がマグネシウム(Mg)の一部を置換したものです。化学組成は Ca2(Mg,Fe)5Si8O22(OH)2 で、鉄分が多くなるほど緑色が濃くなります。透閃石と同様に、変成岩中に多く見られます。

3. 黒閃石 (Hornblende)

黒閃石は、単斜角閃石グループの中で最も一般的で、かつ化学組成が複雑な鉱物です。鉄やマグネシウムに加え、アルミニウムやナトリウムなども豊富に含みます。そのため、黒色から濃緑色、濃褐色と、多様な色調を示します。火成岩(花崗岩、閃緑岩、玄武岩など)や変成岩(片麻岩、角閃岩など)の主要な構成鉱物の一つです。

4. 藍閃石 (Glaucophane)

藍閃石は、ナトリウムを多く含み、特徴的な青色を呈する単斜角閃石です。化学組成は Na2Mg3Al2Si8O22(OH)2 または Na2Fe3Al2Si8O22(OH)2 です。高圧・低温の変成作用を受けた岩石(藍閃石片岩など)に特徴的に産出します。

産出と生成環境

単斜角閃石は、地球上の様々な地質環境で生成します。主に以下の環境で見られます。

1. 変成岩

高温・高圧下での岩石の変成作用によって生成する代表的な鉱物です。蛇紋岩、片岩、片麻岩、角閃岩などの変成岩の主要な構成成分となります。特に、マグネシウムや鉄を豊富に含む岩石が変成を受ける際に、透閃石や鉄閃石、黒閃石などが生成しやすいです。

2. 火成岩

マグマが冷却固結する過程でも生成します。安山岩、玄武岩、花崗岩、閃緑岩などの深成岩や火山岩中に、石英や長石、雲母などと共に産出します。黒閃石は、火成岩中の主要な造岩鉱物の一つです。

3. 堆積岩

既存の岩石が風化・侵食され、堆積した後に、続成作用や軽度の変成作用を受けることで生成することもあります。

応用と利用

単斜角閃石は、その物理的・化学的性質から、様々な分野で利用されたり、研究されたりしています。

1. 建材・装飾品

一部の単斜角閃石、特に色調が美しいものや透明度の高いものは、装飾石材や宝石として利用されることがあります。また、その硬度や耐久性から、建材の一部として使用されることもあります。かつては、アスベストとして断熱材などに使われた歴史もありますが、現在ではその健康被害が問題視され、使用は制限されています。

2. 地質学的指標

単斜角閃石の種類や産状は、その岩石が生成した温度、圧力、化学的条件を知るための重要な 地質学的指標 となります。例えば、藍閃石の存在は、高圧・低温という特殊な変成環境を示唆します。

3. 材料科学・研究

単斜角閃石の結晶構造や化学組成の多様性は、材料科学分野での研究対象にもなっています。特定の組成を持つ角閃石が持つ性質(耐熱性、耐薬品性など)を模倣した新素材の開発や、地球内部の物質循環の研究などに役立てられています。

4. 環境・地球化学

単斜角閃石は、岩石の風化・分解過程で生成する鉱物でもあります。そのため、土壌生成や元素の循環、あるいは環境汚染物質の吸着・固定といった地球化学的なプロセスを理解する上で重要な役割を果たします。

まとめ

単斜角閃石は、その多様な化学組成、構造、そして生成環境を持つ鉱物グループです。黒閃石を代表とする多くの種類が存在し、変成岩や火成岩の主要な構成鉱物として地球の地殻を形成しています。その生成過程は地質学的な情報を多く含み、また、一部は建材や装飾品としても利用されてきました。現代においても、地質学、材料科学、地球化学といった様々な分野で、その性質や役割が解明され続けている、非常に興味深い鉱物と言えます。