天然石

鉄電気石

鉄電気石(テルル電気石)の詳細

概要

鉄電気石(てつでんきいし)は、鉱物の一種であり、電気石(トルマリン)グループに属する鉱物です。化学組成としては、NaFe3Al6(BO3)3Si6O18(OH)4で表され、鉄(Fe)を主成分とする電気石です。その名称は、構成元素である鉄(Fe)と、電気石であることを示しています。

名称の由来と分類

「電気石」という名称は、電気石(トルマリン)が持つ「圧電性」と「焦電性」に由来します。圧電性とは、物質に圧力を加えると電荷が発生する性質であり、焦電性とは、温度変化によって電荷が発生する性質です。鉄電気石もこの電気石グループに属するため、これらの性質を示します。

鉄電気石は、電気石グループの中でも特に鉄(Fe)の含有量が多い品種として知られています。電気石グループは、その化学組成によってさらに細かく分類されており、鉄電気石はショール(Schorl)と呼ばれるグループに属します。ショールは、電気石グループの中で最も一般的な品種の一つです。

産状

鉄電気石は、比較的広範な地質環境で生成します。主に以下の様な場所で見られます。

  • 火成岩:花崗岩、ペグマタイト、流紋岩などの酸性火成岩中に比較的多く産出します。特に、ペグマタイト脈中では、大きな結晶として産出することもあります。
  • 変成岩:広域変成作用や接触変成作用を受けた岩石中にも見られます。片岩、片麻岩など。
  • 堆積岩:砂岩や泥岩など、一部の堆積岩中にも二次的に産出することがあります。
  • 熱水鉱床:熱水活動によって形成された鉱床中にも、他の鉱物と共に産出します。

世界各地で産出が報告されており、ブラジル、アメリカ、ロシア、アフガニスタン、アフリカ諸国などが主な産地として挙げられます。

物理的・化学的性質

鉄電気石の最も特徴的な性質の一つはその色です。一般的に、黒色を呈しますが、鉄の量や他の微量元素の混入によって、濃い茶色、藍色、緑色を帯びることもあります。単結晶では、中心部と外縁部で色が異なる「ゾーニング」と呼ばれる現象を示すこともあります。

結晶構造

電気石グループに共通する三方晶系の結晶構造を持ちます。結晶形は、長柱状、針状、板状など多様ですが、一般的には三角柱状の自形結晶として産出することが多いです。柱状結晶の断面は、円形または三日月形に近い形をしています。

硬度

モース硬度は7~7.5であり、比較的硬い鉱物です。このため、装飾品としても利用されることがあります。

比重

比重は、3.1~3.5程度です。

劈開

不完全な平行劈開を持ちますが、あまり明瞭ではありません。

光沢

ガラス光沢を示します。

断口

貝殻状断口または不平坦状断口を示します。

融点

融点は比較的高く、1500℃以上です。

電気的性質

前述したように、圧電性と焦電性を示します。この性質により、帯電しやすく、ホコリを引き寄せる性質があるため、「ホコリ吸い」と呼ばれることもあります。

鉱物学的な特徴

化学組成

鉄電気石の化学組成は、NaFe3Al6(BO3)3Si6O18(OH)4と表されます。しかし、天然に産出する鉱物は純粋な組成を持つことは稀であり、他の電気石グループの成分(Mg、Mn、Ti、Cr、Vなど)が固溶していることが一般的です。特に、マグネシウム(Mg)を主成分とするリチア電気石(エルバイト)との固溶関係が重要です。鉄(Fe)の量が増加するにつれて、色が黒色に近づきます。

仲間

鉄電気石は、電気石グループの一員であり、このグループには様々な組成や色を持つ鉱物が含まれています。代表的なものとしては、以下のものが挙げられます。

  • リチア電気石(Elbaite):最も宝飾品として価値が高い、カラフルな電気石。
  • マグネシオ電気石(Magnesio-foitite):マグネシウムを主成分とする電気石。
  • リチア電気石(Liddicoatite):リチウムとカルシウムを主成分とする電気石。
  • 鉄電気石(Schorl):本項で解説している鉄を主成分とする黒色電気石。

これらの鉱物は、化学組成の連続性によって互いに移行することがあります。

用途と利用

鉄電気石は、その特性から様々な用途で利用されています。

宝飾品・装飾品

黒色で艶のある鉄電気石は、宝飾品や装飾品として加工されることがあります。特に、他の色の電気石との組み合わせや、カメオ彫刻などに用いられることもあります。しかし、一般的に価値が高いとされるカラフルな電気石に比べると、宝飾品としての価値はやや劣る傾向があります。

工業用途

圧電性や焦電性といった電気的性質から、一部の工業分野での応用が研究されています。例えば、センサーやアクチュエーターとしての利用が考えられます。また、イオン発生や遠赤外線放射といった性質が注目され、健康グッズや浄水器などに利用されることもありますが、これらの効果については科学的な根拠が確立されていない場合もあります。

鉱物標本

その独特な形状や色から、鉱物標本としても人気があります。特に、美しい結晶形を持つものはコレクターの間で評価が高いです。

その他の利用

一部の文化では、パワーストーンとして、魔除けや精神的な安定をもたらすと信じられています。

特徴的な性質と俗説

ホコリ吸い

鉄電気石は、その電気的性質により、静電気を帯びやすく、周囲のホコリやゴミを引き寄せることがあります。このため、「ホコリ吸い」という俗称で呼ばれることもあります。これは、鉱物学的な性質によるもので、科学的な現象です。

パワーストーンとしての効果

パワーストーンの世界では、鉄電気石はグラウンディング(地に足をつける)、保護、ネガティブなエネルギーの浄化などの効果があるとされています。また、精神的な安定や自信を高める効果があると信じられていることもあります。これらの効果は、科学的に証明されているものではありませんが、多くの人々がその精神的なサポートを求めて利用しています。

まとめ

鉄電気石は、電気石グループに属する黒色を主とする鉱物であり、その名称の由来となった圧電性と焦電性といった特徴的な電気的性質を持ちます。火成岩や変成岩など、様々な地質環境で生成し、世界中で産出します。その硬度とガラス光沢から宝飾品としても利用されますが、工業用途や健康グッズとしての応用も研究されています。また、パワーストーンとしての信仰も厚く、多くの人々にとって特別な意味を持つ鉱物です。その黒く力強い姿と、秘められたエネルギーは、古くから人々を魅了し続けています。