褐簾石(かつれんせき):詳細・その他
鉱物としての褐簾石
褐簾石(かつれんせき、allanite)は、ケイ酸塩鉱物の一種であり、造岩鉱物として広く知られています。化学組成は (Ca,REE)2(Al,Fe,Mg)3(Si2O7)(SiO4)O(OH) で表され、カルシウム(Ca)と希土類元素(REE)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)などを主成分とします。特に、希土類元素を多量に含み、その含有量によって様々なサブグループに分類されることがあります。
結晶構造と物理的性質
褐簾石は、単斜晶系に属し、一般的には板状、柱状、または不規則な粒状の結晶として産出します。その結晶構造は、ケイ素(Si)と酸素(O)からなるケイ酸塩グループに分類される「ソー屉(そうれい)ケイ酸塩」に特徴的な構造を持っています。
* **色:** その名の通り、褐色を呈することが多いですが、暗緑色、黒色、赤褐色など、組成によって多様な色合いを示します。
* **光沢:** 樹脂光沢から金属光沢、あるいはガラス光沢を呈します。
* **硬度:** モース硬度では5.5~6程度であり、比較的硬い鉱物です。
* **比重:** 3.0~4.2程度で、組成によって変動します。
* **劈開:** 不明瞭で、断口は貝殻状から不平坦状を示します。
* **条痕:** 通常は白色から灰白色です。
化学的特徴と希土類元素
褐簾石の最大の特徴は、希土類元素(レアアース)を豊富に含んでいる点です。ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)などの軽希土類元素が主ですが、イットリウム(Y)や、スカンジウム(Sc)なども含まれることがあります。これらの希土類元素の含有量や比率によって、褐簾石の化学組成は複雑になります。
産出環境と地質学的意義
褐簾石は、様々な火成岩や変成岩の中に産出します。
火成岩における産状
* **花崗岩質岩:** 花崗岩、閃緑岩、石英閃長岩などの深成岩や、流紋岩、デイサイトなどの火山岩に副成分鉱物としてしばしば見られます。
* **アルカリ岩:** アルカリ玄武岩やネフェリン閃長岩など、アルカリ性の火成岩にも比較的多く産出します。
* **ペグマタイト:** 花崗岩質ペグマタイト中では、比較的大きな結晶として産出することがあります。
変成岩における産状
* **広域変成岩:** 緑色片岩相から角閃岩相、グラニュライト相にかけての広域変成作用を受けた岩石中に見られます。
* **接触変成岩:** 石灰岩などがマグマに接触して変成作用を受けたスカルンなどにも産出します。
* **片麻岩、結晶質砂岩など:** 様々な変成岩の構成鉱物として、あるいは変成作用によって再結晶した岩石中に見られます。
地質学的な意義
褐簾石の存在は、その岩石の成因や地質学的履歴を知る上で重要な手がかりとなります。特に、希土類元素の含有量や同位体比は、マグマの起源、分化過程、あるいは変成作用の温度・圧力条件などを推定するためのトレーサーとして利用されることがあります。また、褐簾石は放射性元素(ウランやトリウム)を含むことがあり、その放射年代測定にも利用されることがあります。
褐簾石の分類と名称の由来
褐簾石は、その複雑な化学組成から、かつては複数の鉱物種に分けられていました。しかし、現在では国際鉱物学連合(IMA)によって、褐簾石(allanite)を包括する一つの鉱物種として扱われています。その中で、主要な陽イオンの置換や希土類元素の組成比によって、以下のようなサブグループ(かつての鉱物種)が区別されることがあります。
* **褐簾石-(Ce):** 最も一般的なタイプで、セリウム(Ce)を最も多く含むもの。
* **褐簾石-(La):** ランタン(La)を最も多く含むもの。
* **褐簾石-(Y):** イットリウム(Y)を最も多く含むもの。
* **褐簾石-(Nd):** ネオジム(Nd)を最も多く含むもの。
これらの名称の -(Ce), -(La), -(Y), -(Nd) は、その鉱物種において優位な希土類元素を示す接尾辞です。
「allanite」という名称は、19世紀初頭にアイルランドの地質学者トマス・アラン(Thomas Allan)にちなんで命名されました。
褐簾石の用途と研究
褐簾石は、それ自体が宝石として利用されることは稀ですが、その学術的価値は非常に高いものがあります。
学術研究における価値
* **地球化学:** 希土類元素の挙動や分配を調べるための研究対象となります。
* **岩石学:** 造岩鉱物としての役割や、岩石の生成・変成過程を解明するための手がかりとなります。
* **鉱床学:** 希土類元素鉱床の生成メカニズムを理解する上で重要です。
* **放射年代学:** ウラン・鉛年代測定やトリウム・鉛年代測定の対象として、岩石の年代を決定するために利用されます。
その他の興味深い性質
* **比着色性:** 褐簾石は、その放射能によって周囲の鉱物を変色させることがあります。
* **包裹物:** 内部に他の鉱物や流体包有物を包有することがあり、岩石の形成環境を推測するのに役立ちます。
まとめ
褐簾石は、希土類元素を豊富に含む複雑な組成を持つケイ酸塩鉱物であり、地球上の様々な火成岩や変成岩の中に産出します。その化学組成や同位体比は、岩石の成因や地質学的履歴を理解するための貴重な情報源となります。宝石としての価値は低いものの、地球科学分野における学術研究においては非常に重要な鉱物の一つと言えるでしょう。その発見以来、多くの研究者によってその性質や地質学的意義が探求されており、今後も更なる発見や理解が進むことが期待されます。
