橄欖石：詳細・その他
概要
橄欖石（かんらんせき、olivine）は、ケイ酸塩鉱物の一種であり、マグネシウムと鉄のケイ酸塩を主成分とする造岩鉱物です。
化学式は(Mg, Fe)2SiO4で表され、マグネシウム（Mg）と鉄（Fe）の比率によって性質が変化します。フォーステライト（Mg2SiO4）とフェヤライト（Fe2SiO4）の固溶体として存在し、フォーステライトを端成分とする系列をオリビン系列と呼びます。
その名の通り、オリーブ色を呈することが多いですが、鉄の含有量や不純物によって黄緑色、緑色、褐色、黒色など、様々な色合いを示すことがあります。
鉱物学的特徴
化学組成と構造
橄欖石の化学組成は、マグネシウムと鉄のマグネシウムイオン（Mg2+）と鉄イオン（Fe2+）がランダムにケイ素原子（Si4+）と酸素原子（O2-）からなる四面体構造の隙間を占めるオリビン構造をとります。
(Mg, Fe)2SiO4という化学式は、マグネシウムと鉄が互いに置換できることを示しています。
物理的性質
- 結晶系：斜方晶系
- 劈開：{010}方向に完全
- 断口：貝殻状または不規則状
- 硬度（モース硬度）：6.5～7
- 比重：3.2～4.4（鉄の含有量が増えるほど重くなる）
- 光沢：ガラス光沢
- 透明度：透明～半透明
色と条痕
橄欖石の条痕は白色です。色は前述の通りオリーブ色が代表的ですが、鉄の含有量や酸化の度合いによって黄緑色、濃緑色、褐色、黒色など多様です。微量のニッケルやクロムなどが発色団となることもあります。
産状と分布
地質学的意義
橄欖石は、地球のマントルの主成分であるかんらん岩の主要な鉱物であり、地球内部の物質を理解する上で極めて重要な鉱物です。
火成岩、特に塩基性火成岩（玄武岩など）や超塩基性火成岩（かんらん岩、ペリドタイトなど）に多量に含まれます。また、変成岩の中にも産出します。
火山噴出物として地表に露出することもあり、ハワイの砂浜で見られる緑色の砂は、橄欖石の結晶が風化・浸食されて細かくなったものです。
主な産地
橄欖石は世界各地で産出します。代表的な産地としては以下が挙げられます。
- ミャンマー（ビルマ）
- エジプト
- アメリカ合衆国（アリゾナ州、ハワイ州など）
- ブラジル
- パキスタン
- 南アフリカ
特に宝石として扱われる上質な橄欖石は、ミャンマーやエジプト、パキスタンなどから産出されます。
宝石としての橄欖石
ペリドット
橄欖石の中で、宝石として利用される高品質なものはペリドット（Peridot）と呼ばれます。ペリドットは、宝石の中でも8月の誕生石として有名です。
ペリドットは、鮮やかなオリーブグリーンから黄緑色をしており、インクルージョン（内包物）が少なく、透明度が高いものが評価されます。
特徴と価値
ペリドットの色は、鉄の発色によるものが主ですが、ニッケルが微量に含まれることでより鮮やかな緑色を呈することもあります。
硬度が6.5～7と、比較的傷つきやすい性質を持っています。そのため、ジュエリーとして使用する際は、衝撃に注意が必要です。
ペリドットの価値は、色、透明度、カラット（重さ）、カットなどに左右されます。特に鮮やかで均一な緑色、インクルージョンが少なく透明度の高いものが高価に取引されます。
その他
学術的・産業的意義
橄欖石は、地球の内部構造やマントルの進化を理解する上で不可欠な鉱物です。地震波の伝播の速度や性質から地球内部の物質が推定されますが、橄欖石はその大部分を占めていると考えられています。
高温高圧下での橄欖石の性質の研究は、地球科学の分野で重要な役割を担っています。
産業においては、一部の鉱物が耐火物や研磨材として利用されることもありますが、主な用途は宝石としてのペリドットです。
伝説と象徴
ペリドットは、古代から「太陽の石」や「イブニングエメラルド」などと呼ばれ、力や癒し、幸運をもたらす力を秘めていると信じられてきました。古代エジプトでは、魔除けや癒しの効果があると考えられていました。
宝くじやギャンブルにおける幸運を招くと言われることもあります。
まとめ
橄欖石は、地球のマントルの主成分であり、地球内部を理解する上で重要な造岩鉱物です。マグネシウムと鉄のケイ酸塩を主成分とし、オリーブ色を基本とする多様な色を呈します。宝石として利用される高品質なものはペリドットと呼ばれ、8月の誕生石として知られています。硬度は6.5～7で、比較的傷つきやすい性質を持ちますが、その美しさと象徴する意味から、世界中で愛されています。
