天然石

鉄重石

鉄重石:詳細・その他

概要

鉄重石(てつじゅうせき、Wolframite)は、タングステン(W)と鉄(Fe)の酸化物からなる鉱物グループの総称です。化学組成としては、タングステン酸鉄(FeWO₄)を主成分としますが、マンガン(Mn)の置換も多く見られ、鉄に富むフェロタングステン(FeWO₄)とマンガンに富むシュイール石(MnWO₄)の間の固溶体(系列)を形成します。この二つの端成分鉱物の名称を合わせたものが鉄重石というグループ名となっています。

天然に産出する鉄重石は、ほとんどがこのフェロタングステンとシュイール石の混合物であり、その比率によって性質が変化します。一般的に、鉄の含有量が多いほど重く、黒色を呈し、マンガンの含有量が多いほどやや赤みがかった色になる傾向があります。鉄重石は、タングステン鉱石として最も重要な鉱物の一つであり、その用途の広さから、戦略的にも重要な鉱物資源とされています。

産状と生成環境

鉄重石は、主に熱水鉱床(ねっすいこうしょう)から産出します。これは、地下深部で高温高圧の水溶液が岩石の割れ目などを通って上昇し、温度や圧力の変化によって鉱物が析出・沈殿して形成される鉱床です。鉄重石を含む熱水溶液は、花崗岩質マグマの活動に関連して生成されることが多いとされています。

具体的な生成環境としては、以下のものが挙げられます。

  • 花崗岩質ペグマタイト:マグマの最終的な結晶化段階で、水や揮発性成分が濃縮された部分から形成される粗粒の岩石です。
  • 石英脈:熱水溶液が石英(クォーツ)と共に析出して形成された脈状の鉱床です。
  • スカルン鉱床:マグマの熱によって、周囲の炭酸塩岩(石灰岩など)が変質して形成される鉱床です。

これらの鉱床において、鉄重石はしばしば、石英、黄鉄鉱(パイライト)、白雲母(マスコバイト)、トルマリンなどと共生して産出します。

物理的・化学的性質

化学組成

鉄重石の化学組成は、一般式 (Fe,Mn)WO₄ で表されます。これは、タングステン酸鉄(FeWO₄)とタングステン酸マンガン(MnWO₄)が完全に固溶することを示しています。天然の鉄重石は、この二つの端成分の間の組成を持ちます。

鉄に富む端成分はフェロタングステン(FeWO₄)と呼ばれ、マンガンに富む端成分はシュイール石(MnWO₄)と呼ばれます。これらは鉄マンガン重石系列を形成します。

結晶系と結晶形

鉄重石は単斜晶系に属します。結晶形としては、板状、柱状、粒状などが見られます。しばしば、平行双晶を形成することもあります。結晶面には条痕が見られることがあります。

鉄重石の色は、鉄とマンガンの比率によって変化します。一般的に、鉄分が多いほど黒色に近く、マンガン分が多いほど赤褐色や茶色を呈します。純粋なフェロタングステンは黒色、純粋なシュイール石は赤褐色です。

光沢

鉄重石は半金属光沢または樹脂光沢を示します。これは、金属のような鈍い光沢から、樹脂のような光沢まで様々です。

硬度

モース硬度は、おおよそ4.5~5.5程度です。これは、ナイフで傷をつけることができる程度の硬さです。

比重

比重は、7.1~7.9と比較的重い鉱物です。鉄の含有量が多いほど比重は大きくなる傾向があります。

条痕

鉄重石の条痕(鉱物を素焼きの板にこすりつけたときに付く粉の色)は、黒色または暗褐色です。

劈開

完全な劈開は認められませんが、 {100} 面に平行な1方向にやや劈開性を示します。断口は貝殻状または不規則です。

その他

鉄重石は、紫外線を当てると蛍光を発するものもありますが、その色は産地や組成によって異なります。

分類と種類

鉄重石は、タングステン酸鉄(FeWO₄)とタングステン酸マンガン(MnWO₄)の固溶体であり、その比率によって以下のように分類されます。

  • フェロタングステン(Ferberite):鉄に富む端成分(FeWO₄に限りなく近い組成)。黒色を呈することが多い。
  • シュイール石(Huebnerite):マンガンに富む端成分(MnWO₄に限りなく近い組成)。赤褐色や茶色を呈することが多い。

これら二つの中間組成のものは、単に鉄重石(Wolframite)として扱われることが一般的です。

産地

鉄重石は世界各地で産出しますが、工業的な採掘が行われている主な産地としては、以下のような地域があります。

  • 中国:世界最大のタングステン生産国であり、鉄重石の主要な産地です。
  • ベトナム:中国に次ぐタングステン産出国です。
  • ロシア:シベリア地方などで産出します。
  • ボリビア:南米における主要なタングステン産地です。
  • ポルトガル:ヨーロッパにおける主要なタングステン産地です。
  • カナダ:ブリティッシュコロンビア州などで産出します。
  • アメリカ:アイダホ州、カリフォルニア州などで産出します。

日本国内では、かつて福島県、富山県、岐阜県などで少量ながら採掘された記録がありますが、現在では商業的な採掘は行われていません。しかし、研究やコレクター向けに、これらの地域や海外の鉱物標本が流通しています。

用途

鉄重石の最も重要な用途は、タングステンの原料となることです。タングステンは、その高い融点、硬度、耐摩耗性、耐熱性といった優れた特性から、様々な産業分野で不可欠な金属となっています。

  • 超硬合金:タングステンの粉末をコバルトなどの結合材と焼結させたもので、ドリルビット、切削工具、金型などに広く使用されます。
  • 電球のフィラメント:かつて白熱電球のフィラメントに広く使われていました。
  • 高速度鋼:工具鋼の成分として、硬度と耐摩耗性を向上させます。
  • 電極:溶接用電極や、高電圧放電管などに使用されます。
  • 合金:ステンレス鋼の強化、耐食性向上などに貢献します。
  • その他:化学触媒、顔料、放射線遮蔽材、軍事用途(徹甲弾など)としても利用されます。

鉄重石は、これらのタングステン製品を製造するための主要な鉱石資源として、現代社会において極めて重要な役割を担っています。

鉱物としての魅力

鉄重石は、その黒色や赤褐色の重厚な色合い、そして金属的な光沢から、鉱物コレクターの間でも人気があります。特に、石英や他の鉱物との共生標本は、その産状をよく示しており、学術的にも観賞的にも価値があります。また、タングステンという戦略的にも重要な元素の源であるという事実は、鉄重石に特別な意味合いを与えています。

まとめ

鉄重石は、タングステンを産出する主要な鉱石であり、その用途の広さから現代社会に不可欠な鉱物資源です。熱水鉱床を中心に産出し、化学組成や産地によってフェロタングステンとシュイール石という端成分に分けられます。その物理的・化学的特性は、タングステンという金属の特性に直結しており、超硬合金をはじめとする様々な先端産業を支えています。鉱物としても、その独特の色合いや光沢からコレクターに愛されています。