ミメット鉱(Mimetite)の詳細・その他
概要
ミメット鉱は、化学式Pb5(AsO4)3Clで表されるリン酸塩鉱物であり、バナジン酸鉛(バナダナイト)やリン酸鉛(ピロモルファイト)と固溶体を形成することが知られています。これらの鉱物は、ヒドロキシアパタイト構造を共有しており、ヒ素(As)がバナジウム(V)やリン(P)に置換された関係にあります。ミメット鉱は、鉛(Pb)、ヒ素(As)、塩素(Cl)の塩化物であり、鉛の二次鉱物として、鉛を含む鉱床の酸化帯や浅熱水鉱床で生成されます。その名前は、ギリシャ語の「mimetikos」(模倣する)に由来しており、ピロモルファイトに似ていることから名付けられました。
化学組成と構造
ミメット鉱の化学組成は、一般的にヒ素酸鉛(Pb5(AsO4)3Cl)ですが、バナジン酸鉛(Pb5(VO4)3Cl)やリン酸鉛(Pb5(PO4)3Cl)との固溶体を形成するため、ヒ素(As)の一部がバナジウム(V)やリン(P)に置換されることがあります。そのため、厳密にはヒ素酸鉛としての純粋なミメット鉱だけでなく、バナジン酸鉛やリン酸鉛との中間組成を持つ鉱物も含まれます。
結晶構造は、六方晶系に属し、アパタイトグループに類似した六角柱状の結晶を形成します。この構造では、鉛イオンが塩素イオンやアニオン(ヒ素酸イオン、バナジン酸イオン、リン酸イオン)と配位しています。
固溶体系列
ミメット鉱は、バナジン酸鉛(バナダナイト)およびリン酸鉛(ピロモルファイト)と完全な固溶体系列を形成します。この系列は、アニオン部分のヒ素(As)、バナジウム(V)、リン(P)の置換によって特徴づけられます。
* **ミメット鉱 (Mimetite):** Pb5(AsO4)3Cl
* **バナジン酸鉛 (Vanadinite):** Pb5(VO4)3Cl
* **リン酸鉛 (Pyromorphite):** Pb5(PO4)3Cl
この固溶体系列では、ヒ素、バナジウム、リンの比率によって鉱物の名称が区別されますが、実際にはこれらの元素が混在した組成を持つことが一般的です。例えば、ヒ素を多く含むバナジン酸鉛は、ミメット鉱に近い性質を示すことがあります。
産出地と生成環境
ミメット鉱は、鉛を主要成分とする鉱床の酸化帯において、鉛鉱物(方鉛鉱など)の二次変化によって生成されます。また、浅熱水鉱床や堆積岩中にも見られます。
主な産出地
世界各地で産出しており、特に以下の地域で知られています。
* **メキシコ:** チワワ州
* **アメリカ合衆国:** アリゾナ州、ニューメキシコ州、ユタ州
* **アルゼンチン:** コルドバ州
* **ナミビア:** オツシ鉱山
* **モロッコ:**
* **オーストラリア:**
* **日本:** 兵庫県、栃木県など
これらの地域では、鉛、亜鉛、銀などの鉱床が発達しており、酸化帯での二次鉱物としてミメット鉱が産出します。
生成環境
ミメット鉱は、地下水などの水溶液による化学的風化や熱水作用によって生成されます。鉛鉱物が酸化・溶解し、ヒ素、バナジウム、リンなどのアニオンと結合して沈殿します。特に、ヒ素を多く含む熱水溶液が存在する環境で生成されやすい傾向があります。
物理的・化学的性質
ミメット鉱は、その色、光沢、硬度など、いくつかの特徴的な性質を持っています。
外観と色
ミメット鉱は、黄色、黄褐色、オレンジ色、茶色、緑色、無色など、多彩な色を示します。これは、微量の不純物(特に鉄や銅など)の混入や、固溶体を形成するバナジウムやリンの存在量によって影響されます。
* **光沢:** 樹脂光沢からガラス光沢。
* **条痕:** 白色から淡黄色。
* **透明度:** 半透明から不透明。
硬度と比重
* **モース硬度:** 3~4.5程度。比較的柔らかい鉱物です。
* **比重:** 7.0~7.5程度。鉛を多く含むため、重いです。
結晶形態
主に六角柱状の結晶として産出しますが、粒状、塊状、腎臓状、緻密状など、様々な形態で産出します。単晶はしばしば端部がピラミッド状や平板状になっています。
その他の性質
* **劈開:** ほとんど認められないか、不明瞭です。
* **断口:** 貝殻状から不平坦状。
* **条痕:** 白色から淡黄色。
* **条線:** 結晶面にはしばしば縦条がみられます。
* **条痕:** 白色から淡黄色。
鉱物学的意義と利用
ミメット鉱は、その化学組成や産状から、鉱物学的な研究において重要な鉱物です。また、一部の地域では鉛やヒ素の鉱石として扱われることもあります。
鉱物学的研究
ミメット鉱は、アパタイトグループの鉱物であり、固溶体系列の研究において重要な対象となります。ヒ素、バナジウム、リンといったアニオンの置換が、結晶構造や物理的性質にどのような影響を与えるかを理解する上で役立ちます。また、酸化帯における鉛鉱物の二次変化プロセスを解明するためにも重要です。
経済的価値
ミメット鉱自体が直接的な鉱石として利用されることは稀ですが、鉛、ヒ素、バナジウムなどの元素を含んでいるため、それらの元素の採掘対象となる鉱床で発見されることがあります。特に、ヒ素は毒性があるため、環境への影響を考慮する必要があります。
宝飾品としての利用
ミメット鉱は、その美しい色合いや結晶形から、コレクターや愛好家の間で人気があります。特に、透明感のある黄色やオレンジ色の結晶は、宝飾品や装飾品として加工されることもありますが、その硬度の低さから、耐久性には限界があります。
まとめ
ミメット鉱は、鉛、ヒ素、塩素を主成分とするリン酸塩鉱物で、バナジン酸鉛やリン酸鉛と固溶体を形成する興味深い鉱物です。二次鉱物として鉛鉱床の酸化帯などで産出し、黄色から茶色にかけての多彩な色合いと六角柱状の結晶が特徴です。鉱物学的な研究対象としてだけでなく、その美しさからコレクターにも愛されています。ただし、ヒ素を含むため、取り扱いには注意が必要です。
