天然石

燐灰ウラン石

燐灰ウラン石(Rhabdophane)の詳細・その他

概要

燐灰ウラン石(Rhabdophane)は、稀に産出するウランを含むリン酸塩鉱物です。その名称は、ギリシャ語で「棒」を意味する「rhabdos」と「現れる」を意味する「phaino」に由来し、その針状結晶の形態にちなんでいます。主成分は(Ce,La,Nd,Y)3(PO43・nH2O であり、ランタノイド系列の希土類元素とウランが主成分として含まれます。特に、ランタン(La)やセリウム(Ce)といった軽希土類元素が優位に存在することが多いですが、ネオジム(Nd)やイットリウム(Y)も含まれることがあります。ウラン(U)も化学組成中に含まれることがありますが、その量は一般的に少量です。しばしば、微量ながらトリウム(Th)も検出されます。

化学組成と結晶構造

燐灰ウラン石の化学組成は、一般的に(REE)3(PO4)3・nH2Oと表されます。ここでREEは希土類元素(ランタノイドおよびイットリウム)の総称です。具体的には、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、そしてイットリウム(Y)などが含まれ得ます。これらの元素は、サイト占有率に応じて置換されます。また、ウラン(U)やトリウム(Th)も化学量論的な位置を占めることなく、微量に固溶していることがあります。このウランの存在が、一部で「燐灰ウラン石」と呼ばれる所以ですが、ウランの含有量は必ずしも高くはなく、ウラン鉱物として扱われることは稀です。

結晶構造は、六方晶系に属し、空間群はP63/m です。その構造は、リン酸(PO4)四面体と、希土類元素やウランが配位する陽イオンサイトから構成されています。特徴的なのは、(REE,U)3(PO4)3の基本構造ユニットが、水分子(nH2O)と共に層状または鎖状に配置されている点です。この構造により、針状または繊維状の結晶形態を取りやすいとされています。

物理的・化学的性質

燐灰ウラン石の物理的性質は、その組成や産状によって多少のばらつきが見られます。一般的に、モース硬度は4.5~5.5程度であり、比較的脆い鉱物です。比重は3.5~4.0前後で、ウランや希土類元素の含有量によって変動します。色は、無色、白色、淡黄色、淡緑色、淡褐色など、様々です。光沢は、ガラス光沢から樹脂光沢を示します。条痕は白色です。

化学的性質としては、酸に比較的溶けやすい傾向があります。特に、希塩酸や硝酸には溶解し、ランタノイドやウランを溶液中に放出します。この性質は、資源としての利用や分析において重要となります。また、放射性元素であるウランを含むため、自然放射能を示します。その強度はウランの含有量に依存しますが、一般的に高くはありません。

産状と生成環境

燐灰ウラン石は、主にペグマタイト鉱床熱水性鉱床、そして堆積岩中などで産出します。ペグマタイト鉱床では、長石、石英、黒雲母などと共に、希土類元素鉱物として共生することがあります。熱水性鉱床においては、石英、方解石、緑簾石などの鉱物と共に、 hidrotermal fluid(熱水)の作用によって沈殿して生成されると考えられています。また、既存の岩石が風化・侵食され、再沈殿することによって堆積岩中に生成される場合もあります。特に、リン酸塩鉱物や希土類元素、ウランを供給する母岩が存在する環境で、水溶液からの沈殿によって形成されることが多いと推測されています。

世界各地の様々な場所で報告されていますが、日本では、岡山県、山形県、長野県などで産出が確認されています。これらの産地では、ウラン鉱石の副産物として、あるいは希土類元素鉱物として注目されることがあります。多くの場合、少量であり、経済的な採掘対象となることは稀ですが、研究対象としては興味深い鉱物です。

鉱物学的意義と利用

燐灰ウラン石は、その特異な化学組成と結晶構造から、鉱物学的に興味深い鉱物です。希土類元素の挙動や、ペグマタイト鉱床、熱水性鉱床における元素の分化過程を理解する上で、貴重な情報源となります。また、ウランを含むことから、放射性同位体年代測定の可能性も秘めていますが、その応用は限定的です。

資源としての利用は、現在のところ限定的です。ウランの含有量が少ない場合が多く、また、希土類元素も他のより豊富な鉱物(例えば、モナザイトやバストネサイト)から容易に採取できるため、燐灰ウラン石を直接的な資源として開発することは稀です。しかし、希土類元素やウランの分布を調査する際の指標鉱物として、あるいは、特定の地域における鉱床探査の参考になる可能性はあります。

同種鉱物と鑑別

燐灰ウラン石には、化学組成や構造が類似した同種鉱物がいくつか存在します。代表的なものとしては、燐灰石(Apatite)が挙げられます。燐灰石もリン酸塩鉱物であり、カルシウムを主成分としますが、フッ素、塩素、水酸基などが置換した多様な組成を持ちます。燐灰ウラン石は、希土類元素やウランを主成分とする点で燐灰石と区別されます。また、モナザイト(Monazite)も希土類元素を含むリン酸塩鉱物ですが、こちらはランタン、セリウム、トリウムなどを主成分とし、一般的に単斜晶系に属します。

鑑別においては、X線回折(XRD)や化学分析が有効です。肉眼での観察では、色、光沢、結晶形態などからある程度の推測は可能ですが、組成の類似した鉱物との区別は困難な場合があります。特に、ウランの含有量が微量な場合は、放射能測定だけでは特定できません。

まとめ

燐灰ウラン石は、希土類元素とウランを含む稀なリン酸塩鉱物であり、その針状結晶の形態が特徴です。ペグマタイト鉱床や熱水性鉱床、堆積岩中など、様々な環境で生成されます。化学組成は比較的変動しやすく、ランタノイド系列の元素やイットリウム、そして微量のウランやトリウムが含まれます。物理的性質としては、モース硬度4.5~5.5、比重3.5~4.0程度で、酸に溶けやすい性質を持ちます。自然放射能を示すこともありますが、その強度はウラン含有量に依存します。資源としての直接的な価値は限定的ですが、鉱物学的な研究対象や、希土類元素・ウランの分布を知る上での指標鉱物として重要です。