天然石

天青石

天青石(てんせいせき)の詳細・その他

鉱物としての性質

天青石、別名「セレステイン」は、化学組成がSrSO4(硫酸ストロンチウム)である鉱物です。ストロンチウム(Sr)を主成分とし、硫酸イオン(SO4</sub)と結合した硫酸化物(サルフェート)鉱物に分類されます。その名前の由来は、ラテン語の「caelestis」(天空の、空色の)に由来しており、その名の通り、しばしば鮮やかな空色を呈することから名付けられました。しかし、本来の色は無色透明や白色であり、不純物として微量の銅などが含まれることで、青色や淡青色、時には紫色や黄色を呈することがあります。

結晶系と形態

天青石の結晶系は斜方晶系(orthorhombic)であり、一般的には板状や柱状、針状の結晶として産出します。双晶を形成することもあり、その形状は多様です。集合体としては、粒状、腎臓状、繊維状、塊状などが見られます。劈開は完全(perfect)であり、特に{001}面に沿って剥がれやすい性質を持っています。

物理的性質

  • モース硬度: 3~3.5
  • 比重: 3.96~3.98
  • 光沢: ガラス光沢~樹脂光沢
  • 条痕: 白色
  • 断口: 貝殻状~不平坦状
  • 透明度: 透明~半透明

天青石は比較的柔らかい鉱物であり、モース硬度は3~3.5程度です。そのため、宝飾品として加工する際には注意が必要です。比重は3.96~3.98と、他の鉱物に比べてやや重い部類に入ります。光沢はガラス光沢や樹脂光沢を示し、断口は貝殻状や不平坦状になります。透明なものから半透明なものまで存在し、その美しさからコレクターに人気があります。

化学的性質

天青石は、酸に対しては溶解しにくい性質を持っています。しかし、加熱すると分解し、酸化バリウム(BaO)や硫化ストロンチウム(SrS)などを生成することがあります。また、ストロンチウムは放射性同位体も存在するため、その産地によっては微量の放射能を帯びている場合もあります。

産出地と鉱床

天青石は、世界中の様々な場所で産出されています。特に、石灰岩やドロマイトなどの堆積岩中に、鉱脈や空洞充填物として産出することが多いです。また、熱水鉱床や堆積型マンガン鉱床、塩水湖の蒸発岩などからも見つかります。

主要な産地

  • メキシコ: 特にチワワ州には、鮮やかな青色で高品質な天青石が豊富に産出することで知られています。
  • 中国: 浙江省や雲南省などで産出されます。
  • アメリカ: オハイオ州やテキサス州などで見られます。
  • カナダ: オンタリオ州などで産出します。
  • その他: イギリス、ポーランド、ドイツ、ナミビア、マダガスカルなど、世界各地で産出します。

これらの産地では、工業用途やコレクター向けの標本として採掘されています。特にメキシコのチワワ州産の天青石は、その美しさから世界的に有名で、高い価値が付けられています。

鉱床の種類

天青石は、主に以下の種類の鉱床で形成されます。

  • 堆積岩中の空洞充填物: 石灰岩やドロマイトの空洞に、熱水溶液や地下水によって沈殿して形成されます。
  • 熱水鉱床: 地下深部で熱水溶液によって形成される鉱床に伴って産出することがあります。
  • 蒸発岩: 塩水湖などの水が蒸発する際に、ストロンチウムが濃縮されて沈殿し、形成されます。

天青石の利用

天青石は、その主成分であるストロンチウムの供給源として、工業的に非常に重要な鉱物です。ストロンチウムは、様々な分野で利用されており、天青石はその供給源として不可欠な存在となっています。

工業用途

  • ガラス製造: ストロンチウムは、ガラスの屈折率を高め、光沢を向上させる効果があります。特に、ブラウン管テレビのガラス(CRT)では、X線を吸収する役割も担っており、天青石由来のストロンチウムが多用されていました。
  • 花火: ストロンチウム化合物は、花火に鮮やかな赤色を発色させるために使用されます。
  • 合金: ストロンチウムは、アルミニウム合金の強度や延性を向上させるために添加されることがあります。
  • 顔料: ストロンチウム化合物は、顔料としても利用されます。
  • 医療: ストロンチウムは、骨粗鬆症の治療薬としても利用されることがあります。

これらの用途において、天青石は主要なストロンチウム源として採掘・精製されています。特に、CRTテレビの需要が減少した現在でも、他の用途でのストロンチウムの需要は安定しており、天青石の重要性は依然として高いです。

宝石・装飾品としての利用

天青石は、その美しい空色から、一部では宝石や装飾品としても利用されます。しかし、その硬度が比較的低いため、宝飾品として加工されることは稀であり、主にコレクター向けの標本や、研磨されたカボション、ビーズなどとして流通しています。特に、透明度が高く、均一な青色を呈するものは価値が高いとされています。

天青石の鑑別と注意点

天青石は、他の青色を呈する鉱物と混同されることがあります。例えば、アズライト(藍銅鉱)やラピスラズリなどが挙げられます。鑑別する際には、硬度、比重、条痕、劈開などの物理的性質を確認することが重要です。また、天青石はストロンチウムの供給源であるため、その産地によっては放射能を帯びている場合もあります。購入や取り扱いにおいては、信頼できる業者から購入し、必要であれば放射能測定を行うなどの注意が必要です。

まとめ

天青石(セレステイン)は、化学組成が硫酸ストロンチウム(SrSO4)である鉱物であり、しばしば美しい空色を呈することからこの名が付けられました。斜方晶系に属し、板状や柱状の結晶として産出します。モース硬度は3~3.5と比較的柔らかいですが、比重はやや重く、ガラス光沢を示します。世界各地の堆積岩中などに産出し、特にメキシコ産のものが有名です。工業的には、ストロンチウムの重要な供給源として、ガラス製造、花火、合金、顔料、医療など、多岐にわたる分野で利用されています。宝石や装飾品としても、その美しい色合いから一部で利用されることがありますが、硬度の低さから宝飾品としての流通は限られています。鑑別には物理的性質の確認が重要であり、産地によっては放射能に注意が必要です。天青石は、その美しさと工業的な重要性を兼ね備えた、魅力的な鉱物と言えます。