鉱物雑誌編集部から、最新の鉱物情報をお届けします。今回は、近年注目を集めている「ヴェリーキイ鉱」について、その詳細とその他情報を網羅的に解説します。
ヴェリーキイ鉱とは?
ヴェリーキイ鉱(Velikiyite)は、2018年にロシアのサハ共和国(ヤクーチア)で発見された、比較的新しい鉱物です。その名称は、発見された鉱床の地名である「Velikiy」(ヴェリーキイ)に由来しています。化学組成は、(Na,K)Mn2+3Fe3+(PO4)3 とされており、マンガンと鉄を含むリン酸塩鉱物の一種として分類されています。発見当初は、そのユニークな組成と産状から、鉱物学界で大きな関心を集めました。
ヴェリーキイ鉱の鉱物学的特徴
ヴェリーキイ鉱は、一般的に柱状または針状の結晶として産出します。その色は、鮮やかなオレンジ色から赤褐色、あるいは紫色を帯びたものまで様々です。光沢はガラス光沢を示し、条痕は白色から淡黄色です。モース硬度は5〜5.5程度と、比較的脆い鉱物と言えます。比重は約3.5〜3.6です。結晶構造としては、三斜晶系に属することが知られています。この結晶構造と化学組成の組み合わせが、ヴェリーキイ鉱を特徴づける重要な要素となっています。
ヴェリーキイ鉱の産状と共生鉱物
ヴェリーキイ鉱が発見されたサハ共和国の鉱床は、ペグマタイト脈の一部であると考えられています。ペグマタイトは、マグマがゆっくりと冷え固まる過程で形成される、粗粒の火成岩であり、しばしば珍しい鉱物が産出することで知られています。ヴェリーキイ鉱は、このペグマタイト脈の中で、主にリチウムを含む鉱物や、その他のリン酸塩鉱物と共生して見られます。具体的には、スポジュメン、リチオフィライト、リン鉄石、そして希土類元素を含む鉱物などとの共生が報告されています。これらの共生関係は、ヴェリーキイ鉱が形成された際の地質学的条件を理解する上で重要な手がかりとなります。
ヴェリーキイ鉱の意義と今後の展望
ヴェリーキイ鉱の発見は、地球上の鉱物多様性の豊かさを改めて示唆するものです。特に、マンガンと鉄を特徴的に含むリン酸塩鉱物としての存在は、鉱床の形成過程や元素の挙動に関する新たな知見をもたらす可能性があります。また、その美しい色彩から、コレクターの間でも注目度が高まっています。現時点では、その産出量が限定的であるため、希少な鉱物として扱われていますが、今後さらなる調査によって、新たな産地が発見される可能性も否定できません。ヴェリーキイ鉱の研究はまだ始まったばかりであり、その鉱物学的、地質学的な意義については、今後さらに解明されていくことが期待されます。
その他:ヴェリーキイ鉱に関連する情報
ヴェリーキイ鉱は、その名称が示すように、ロシアのサハ共和国で発見されました。この地域は、ダイヤモンドの産地としても有名ですが、その他にも多様な鉱物が産出するポテンシャルを秘めています。ヴェリーキイ鉱の標本は、その希少性と美しさから、研究機関や個人コレクターの間で大切にされています。今後、より詳細な結晶構造解析や同位体分析などの研究が進むことで、ヴェリーキイ鉱の成り立ちや地球科学的な役割についての理解が深まるでしょう。鉱物雑誌としては、今後もヴェリーキイ鉱に関する最新の研究成果や発見情報を、読者の皆様にお届けしてまいります。